第1 2005年度期成会活動報告

 1 はじめに

本年度、期成会は、「議論とともに実践を!」「一人一役みんなで支える」を活動のスローガンとし、次の5項目を活動の柱として掲げた。

(1) 市民の司法へのアクセスを拡充し、かつ市民の人権を保障する司法改革を実現するため、制度の実施設計の具体化と運用に参加し実行する。

(2) 弁護士会の各種人権擁護活動に参加するとともに、憲法の基本原理の今日的意義について議論を深め、弁護士会の方針づくりと運動を支える。

(3) 会員5000人近い東京弁護士会の会務運営についての中・長期の課題を整理し、先行的な政策討議に取り組む。まず、会員の情報交換の自由を保障する観点から、選挙規定の見直しを検討する。

(4) 期成会会員の年代差が50年を超えているという状況をふまえ、会員間の知的・人的交流を一層深める企画を追求する。

@ 先輩会員と若手会員の意見を会務運営に汲み上げるために、世代別懇談会の開催などきめ細やかな企画を実行する。

A 特に40期以降の会員の活力を引き出し、会活動への参加を促す。昨年度発足した期成会OJT法律研究部を重視し、活性化させる。

(5) 会員500人を超えた期成会組織(執行部、幹事会、常議員団、各委員会、総会、会員集会、夏期合宿)の運営改革を図りつつ、期成会の組織としてのあり方(中・長期展望)の検討を開始する。

@ 特に、幹事会での政策討議を重視する。

A 政策討議、選対などの体制づくりを早期に行う。

B 各種委員会委員や研修所教官など、適材適所の人事推薦を計画的かつ迅速に行う。

  この方針にも基づいて、期成会が取り組んだ活動は次のとおりである。

2 市民の司法アクセスへの拡充(「私たちの政策」の「司法アクセス」参照)

 (1) 今秋、日本司法支援センターがその業務を開始する。今年度、期成会は、「スタッフ弁護士養成事務所」登録を広く会員に呼びかける活動をおこなった。

   しかし、未だ、登録事務所数は少なく、司法支援センター運営の実務を担うスタッフ弁護士が鋭い人権感覚をもって活動をおこなうためにも、期成会員がその養成に取り組むことが必要である。

 (2) 東京簡裁調停部門の墨田分室移転問題については、簡裁を利用する少なくない都民に不便をもたらすものであるので、一点集中に反対する立場を東弁理事者との懇談会等において明らかにし、また、八王子支部の立川移転問題については、期成会多摩支部会員の活動に加え、執行部も理事者懇談会において、東弁全体(1弁、2弁も含め)の問題として議論・検討することを提起した。

 (3) 弁護士任官については、弁護士任官プロジェクトチームで、他薦者名簿の策定を踏まえ精力的な活動をおこなっているが、今期は任官希望者を出すことができなかった。

 (4) 東京パブリック法律事務所が開設4年となり、渋谷パブリック法律事務所、北千住パブリック法律事務所も含め、都民の期待に応える大きな成果を挙げている。

   各事務所の大きな課題の一つは、新人弁護士、若手弁護士の指導をおこなうことができる有能な中堅弁護士の確保にあるが、北千住パブリックの副所長の後任者を未だ確保できないなどの困難に直面している。

   弁護士数5ないし7名以上の事務所で組織的・系統的に中堅弁護士を派遣できるようなシステムを早急に確立しなければならない。

3 「裁判所の処置請求に対する取扱規程(案)」および「開示証拠の複製等の交付等に関する規程(案)」についての取り組み

 (1) 2004年の刑訴法改正により、出頭在廷命令違反、尋問等制限命令違反を理由とする裁判所から弁護士会又は日弁連に対する処置請求が規定された。

   この規定を受けて、2005年度日弁連執行部は、現実に裁判所から処置請求がなされた場合、弁護士会ならびに日弁連がとるべき措置につき何ら規定がないのは、自治、自律を標榜する日弁連としては制度上の不備と言わざるを得ないとの理由で、処置請求に対する取扱規程を定めることとした。

   また、同じく刑訴法改正により、新しい証拠開示制度が導入され、かつ「開示された証拠の管理」「開示された証拠の目的外使用の禁止」および「目的外使用の罪」について規定されたことから、日弁連執行部は、開示証拠の取扱いに関する規程を定めることにした。

   2005年6月29日、日弁連執行部から上記2つの規程(案)が提案され、全国的な討議が開始されたが、刑事関係の委員会や各単位会の批判が強く、同年8月に日弁連は、2つの規程(案)の修正案を提案し、再度、各委員会や各単位会に意見を求めた。

 (2) 期成会は、2005年9月1日の幹事会から2つの規程(案)について本格的議論を開始した。そして、同月21日の東弁会員集会を経て、同年10月3日の幹事会において、1979年〜80年当時の東弁法廷委員会における議論に参加していた菊池絋会員(20期)に特別報告をお願いし、処置請求に対する規程(案)についての集中討議を行った。

   その結果、同規程(案)について、期成会意見の骨格がまとまり、その後の執行部会の議を経て、同月27日付で別紙@の期成会意見書を東弁会長に提出した。

   この期成会意見は、法友会、親和会、東弁の司法改革総合センターの意見にも影響を与え、東弁内の多数意見を形成するものとなり、日弁連執行部の規程(案)は、期成会意見をほぼ採り入れる形で再修正され、2006年3月3日の日弁連臨時総会で可決された。

 (3) 他方、開示証拠に関する規程(案)については、2005年10月3日の期成会幹事会で多様な意見が噴出し、期成会としての意見がまとまらなかった。

   その後、日弁連執行部から2005年12月2日付で同規程(案)の再修正案が出されたことを受けて、同年12月19日の期成会臨時総会で再度討議した結果、期成会意見の骨格がまとまり、同月26日付で別紙Aの意見書を東弁会長に提出した。

   しかし、この期成会意見については、東弁内の多数意見とはならず、日弁連執行部の規程(案)に反映されないまま、2006年3月3日の日弁連臨時総会で日弁連執行部の提案が可決された。

   今後、特に開示証拠に関する規程の運用については、被告人の防禦権及び弁護人の弁護権の行使が制約を受けることがないよう、引き続き重大な関心を持ち続ける必要がある。あわせて、今後具体的な弁護活動をふまえ、弊害を除去する刑訴法の改革に向けて弁護士・弁護士会の取り組みを一層強める必要がある。

4 少年法「改正」問題への取り組み

(1) 少年法「改正」法案は、2005年3月1日、国会に上程されたが、日弁連や児童福祉、少年司法などに携わる多くの市民が反対の声をあげたこともあって、実質審議に入ることなく、同年8月8日に衆議院の解散で廃案となった。

   日弁連は、同年3月の理事会で、@触法少年やぐ犯少年に対する警察官の調査権限の付与・強化に反対する、A14歳未満の少年を少年院に送致することに反対する、B保護観察中の遵守事項違反による少年院収容制度に反対する、C国選付添人制度の拡充には賛成であるが、少年が釈放された場合に国選付添人選任の効力が失われるとの規程は削除するべきである旨の意見書をまとめ、法案の問題点の解消を求める運動を全国的に展開している。

   2006年1月17日までに、全国52単位会の全てが法案反対の会長声明ないし決議をあげている。

   日弁連と東京三会は、2005年5月26日、7月19日に衆議院議員会館で院内集会を、同年6月21日、12月7日には弁護士会館で市民集会を開催した。

 (2) 政府は、2006年2月24日、少年法「改正」法案を再度衆議院に提出した。近く法務委員会での審議が開始される。

   日弁連は、2006年3月7日に衆議院議員会館で院内集会partVを開催し、続いて4月5日には、クレオで市民集会partVを開催する予定である。

 (3) 期成会は、上記の院内集会や市民集会の開催の都度、全会員に対し、集会への参加を呼びかけ、その成功に向けて尽力している。特に、東弁および日弁連の子どもの権利委員会には、期成会会員が多数所属しており、東京および全国の運動をリードしている。

   法案審議は、いよいよ正念場を迎える。子どもへの警察の監視の強化や「厳罰化」は、少年非行の防止につながらないばかりかマイナスである。そして、家庭、学校、社会全体の監視社会化につながる。子どもの成長を支援する福祉的・教育的・医療的援助の充実こそ求められている。

   「改正」法案の重大な問題点をふまえ、引き続き、マスコミの理解を得ながら、市民と連携して国会要請活動を強化しなければならない。

5 憲法問題に対する取り組み

    2005年の衆議院総選挙で自民党が圧勝したことから、憲法改正国民投票法案の国会提出と憲法改正が具体的政治日程に上ることが危惧された。こうした政治情勢の中で本年度期成会は改憲を阻止する立場から積極的に研究、討議に取り組んだ。6月の幹事会で衆議院憲法調査会報告書について、7月の幹事会で自民党新憲法起草委員会各小委員会改憲要綱について、1月の幹事会で自民党新憲法草案について、それぞれ報告と討議を行った。また、9月9日には、経済同友会終身幹事の品川正治氏を招いて「憲法改正問題を考える講演と討論の夕べ」を開催した。これには他会派や法律事務所事務員など多数が参加した。

6 選挙制度見直しへの取り組み

(1) 2005年2月の東弁会長選挙において、期成会は臨時総会を開催し、立候補者の支持決議をしたが、東弁選挙管理委員会からは、これを期成会会員に書面で伝達することは選挙会規違反になると指摘され、書面での伝達ができなかった。

 しかし、団体の機関の決定事項をその構成員に速やかに伝達することは団体の民主的な運営上必要不可欠であるにもかかわらず、それが許されないとすることは不合理である。

 このような問題意識に基づき、期成会は「選挙制度見直し検討チーム」を置き、上記の問題の改善策と、併せて東弁の選挙制度全体の見直しの検討を開始した。

(2) 検討チームの第1次報告書案は5月26日付で執行部に提出された。これを執行部会、幹事会、夏期合宿後の政策委員会で討議したが、報告書案が大幅な選挙活動の自由化を提案するなど大胆な内容であったことから、この案の見直しを求める声が多かった。そこで検討チームから再度8月25日付で第2次報告書が提出された。この内容は相当現実的なものに修正されたが、10月18日に「先輩会員を囲む会」を持ち、第2次報告書を検討した結果、東弁の選挙の腐敗を是正すべく戦ってきた先輩会員からは、選挙の大幅な自由化は金権選挙と腐敗を招く恐れがあることが声高に指摘された。執行部は、このような情況をふまえ、検討チームから提案された多くの改革案のうち、抜本的な改革については見送り、当面緊急に改善を必要とする点を主眼とし、期成会内で意見が概ね一致するか賛同が得られると思われる点について提案書をまとめ、12月1日の総会を経て、別紙Bの「東京弁護士会選挙制度改革に関する提案書」として法友会、親和会、水曜会に提案した。

(3) 現在法友会、親和会とも期成会の提案を受けて選挙制度の具体的な見直しの段階に入っている。

 各会派が一致できる内容を早めにまとめ、来年度の早い段階で理事者会に提案し、来年度中に改革を実現し、来年度内に行われる選挙は改正選挙会規に基づいて実施されることを期待したい。

(4) 検討チームが提案した抜本的な改革を含む報告書案には多くの疑問が投げかけられたものの、この提案によって選挙制度を本質から見直し、抜本的改革に向けての議論の端緒ができたことは有意義であった。

(5) なお、選挙制度に直接関わるものではないが、期成会は本年度選挙に関連して行われてきた2つの慣例について、その改革を他会派に提案した。

 1つは選挙カンパの廃止である。東弁役員選挙において各会派の会員が他会派の役員候補者又は選挙事務所に対してカンパを行ってきたが、期成会はこれを廃止することを他会派に提案し、別紙Cのとおり、2006年1月23日、法友会、親和会、期成会の三会派はカンパを廃止することを申し合わせた。その結果本年度の選挙からカンパのやり取りは行われなくなった。

 もう1つは、選挙後の役員当選者の挨拶回りの合理化についてである。選挙当日、各会派は相互に他会派の選挙打ち上げ会場を訪れ、挨拶をする慣例となっているが、これを別紙Dのとおり、役員当選者が多くの東弁会員に直接決意表明等を行う方向に合理化することを提案した。具体的方法としては、@常議員選挙が行われた年度には、常議員選挙結果発表直後、クレオに多数の東弁会員がいる中で、クレオにおいて役員当選者が当選御礼と決意表明を行うこと、A選挙が全くなかった年度については、三会派が持ち回りで会場を提供し、一つの会派の打ち上げ会場で全役員当選者の挨拶を終了させる、というものである。

7 会員間の知的・人的交流を深める活動

(1) 期成会は、政策集団であって親睦団体ではないとされてきた歴史的経緯から、政策論議は活発に行われてきたが、会員間の親睦や交流は軽視され、また、先輩会員が事務所外の若手会員に事件を配点することも、ボス支配を強化するものとして避けられる傾向があった。

 しかし、期成会が、団体としての結束を強め、活発に活動を展開していくためには、会員間の親睦や交流、あるいは先輩会員が具体的事件を通じて事件処理や経営基盤確立のためのノウハウ等を若手に伝授することも必要である。

 このような視点から、期成会では本年度、企画委員会と、業務対策委員会内OJT法律研究部の活発な活動が展開された。

(2) 企画委員会の活動

知的交流を深める活動としては、会社法勉強会(3回)、新会社法パンフレットの作成等が行われた。人的交流を深める活動としては、18期・19期40周年祝賀会のほか、沖縄三線ライブ、ワインの会、酒蔵見学等が行われた。いずれも多数の参加が得られた。企画委員会の活動はほぼ理想的に展開されており、各企画委員の努力が注目される。

(3) OJT法律研究部の活動

     本年度、8回の部会を開催し、労働審判制度や、労働事件、医療過誤事件、先物取引事件などの処理のポイントについて講義がなされた。また、既にOJT案件として事件処理が行われている特許権侵害事件、不正競争防止法違反事件などについて報告と討議が行われた。

    OJT法律研究部は、2006年度から委員会に昇格する予定である。より積極的な活動を展開するため、先輩会員から多くのOJT案件についての呼びかけを期待したい。

8 期成会組織の運営改革のための活動

  毎年、世代間の年齢、キャリアが広がり、今期は3期から58期までの55年もの開きが生じている。弁護士として同じグランドに立っているとはいえ、この隔差を越えて一つの組織として運営していく困難性は高まっている。 

  多くの会員が何らかの形で期成会の活動に参加できるよう工夫はしているが、未だ緒についたばかりである。

(1) 幹事会

   幹事会では、参加することによって「勉強になる」ことをめざし、憲法問題や弁護士会が直面するいくつかの課題についての30分程度の勉強会をおこなった。これ自体は、短時間ではあるが中身の濃いものであったが、この企画によって、多くの幹事が出席するというところにまでは至っていない。

(2) 中長期人事問題懇談会

   昨年10月、執行部、代表幹事経験者、副会長経験者、司法研修所教官経験者等で「中長期の人事問題に関する懇談会」を開催した。

   弁護士会役員、研修所教官、公設事務所弁護士、弁護士任官者等求められる必要な人事について、泥縄式に対処するのではなく、中長期的視野に立って、「押し付け人事」ではなく、各会員が意欲をもって成長の場として要請に応えるための組織課題を検討するためのものであった。

  今後も適宜懇談会を開催して、議論を深める必要がある。

9 若手会員の活動と参加をめざす活動

(1) 弁護士会への参加

若手会員の東弁や日弁連等の各種委員会への参加は、自覚的、継続的に委員会活動に取り組んでいる一部の期成会員を除けば、必ずしも十分とは言えない。参加を呼びかけるべき期成会人事委員会の活動自体も目に見えるものにはなっていない。人事委員会の活動の強化と若手会員の自覚に期待したい。

(2) 期成会への参加

若手会員の期成会総会や幹事会の出席情況も芳しいとは言えない。東弁にちなんで「若手対策委員会(仮称)」を設置することも考えてよい。

       他方、期成会内各種委員会への若手の結集は注目すべきものがある。企画委員会、公報委員会、OJT法律研究部、夏期合宿委員会等は若手会員中心に活動が展開されている。若手会員がアイディアを出し合うなど若手が参加しやすい委員会となっている。今後もこのような傾向を強化したい。

(3) 新人の参加

57期の会員に対しては、昨年度に引き続き本年度に入った5月にも個別に入会勧誘を行っており、その結果現在の入会者は15名となっている。

 58期の新人会員に対しては、本年度も新人ガイダンスと歓迎会が行われ、多くの新人会員が参加した。新人ガイダンスは、本年度も昨年度に引き続き事務局次長がその内容の決定、当日の進行を担当したが、新人会員の関心に則した内容となっており、成功している。

 58期の会員に対する入会の勧誘は、新人歓迎会の後だけでなく、2006年1月にも行っており、現在19名が入会し、1名が入会希望を明らかにしている。年度が変わった後も入会の勧誘をするとともに新人の所属事務所にも協力を要請していくことが必要である。

10 役員人事等

(1) 弁護士会役員

2006年度の弁護士会役員として、日弁連常務理事に吉羽真治会員(24期)、東弁副会長に並木政一会員(31期)、同監事に桑原育朗会員(39期)、関弁連常務理事に金井克仁会員(34期)、同理事に大森秀昭会員(39期)をそれぞれ出すことができた。

(2) 司法研修所教官

司法研修所刑弁教官に工藤裕之会員(43期)が内定した。昨年度の蛭田孝雪会員(39期)に続き、今回も一回目の立候補で内定した。刑弁教官は千葉肇会員(36期)以来3年連続で出せたが、民弁教官については、本年度1名候補者は得られたものの採用されるには至らなかった。木村裕会員(33期)の後は、最近3年間民弁教官を出せていないことは残念である。期成会としては、今後も継続的に教官を出していくために、毎年民弁1名、刑弁1名の候補は是非出したいところであり、そのためには人材の豊富な大規模事務所の格段の協力を期待したい。

11 日弁連会長選挙に対する取り組み

  本年度行われた日弁連会長選挙は3候補による3つ巴となったが、期成会は2005年中に候補予定者に対し、予め質問事項を提出して所信を聞いた上、2005年12月1日、及び2006年1月10日の期成会総会で討議し、これまでよりも早めに平山候補支持を決めた。選挙公示後の選挙運動には多くの期成会員が熱心に取り組んだ。


 

 

 別 紙

@

2005年10月27日

東京弁護士会

  会長 柳 瀬 康 治  殿

東京弁護士会 期成会

代表幹事 斎 藤 義 房

 

 「裁判所の処置請求に対する取扱規程(案)」についての意見書

 

 当会は、表記取扱規程(案)について、下記のとおり、意見をまとめましたので、東京弁護士会の意見に取り入れていただきたく要望いたします。

 

 

1.第1条(目的)について

 (1) 本規程は、刑事裁判において裁判所の訴訟指揮と弁護人の弁護活動が鋭く対立した場面において適用が予定されている。その意味で、弁護士会としては、裁判所と対峙している刑事弁護人の法廷における弁護権が不当に制限されることがないよう、刑事弁護人を支援・援助する弁護士会の態勢と手続を確立するという視点を第1に置くべきであり、あわせて、公正、適正かつ迅速な裁判を確保するという視点を、もう一つの柱にすえるべきである。この様な観点から本規程を策定するのであれば、規程策定の意義がある。

   そのことは、東京弁護士会の法廷委員会のこれまでの活動の実践と実績からも裏付けられている。

 (2) そこで、本規程の第1条の目的条項に、上記の趣旨こそ明記すべきである。

   すなわち、規程(案)の第11条(運用指針)の文言を第1条に繰り上げ、第1条の「もって」以下を、「もって、弁護人が法廷において弁護権を十全に行使することを確保するとともに、公平、適正かつ迅速な裁判が行われることを確保することを目的とする。」と改めるべきである。

 (3) 弁護士会が、上記(2)の目的に従い、裁判所の処置請求に対し適正に対応するならば、弁護士、弁護士会及び連合会に対する国民の信頼は自ずと確保されるから、本規程の第1条に、わざわざ「国民の信頼を確保することを目的とする」と記載する必要はない。

   本規程(案)の様に「国民の信頼の確保」を正面から目的条項に掲げると、国民世論の名の下に弁護権の十全な行使を制限するのではないかとの危惧の念を拭いきれない。

2.第2条(裁判所から連合会への処置請求)について

 (1) 規程(案)では、裁判所から連合会へ処置請求があったとき、「連合会が自ら対処することを相当と認めたときを除き、当該弁護士の所属する弁護士会に対処することを請求する」という制度構想になっている。

   すなわち、裁判所から連合会へ処置請求があった時の管轄の第1次判断権は連合会にあると条文上解釈される。

   しかしながら、当該弁護士の審級の利益を考慮すると、連合会は、全てについて当該弁護士の所属する弁護士会に対処するよう求め、所属弁護士会からの申出等により適当と認めるときには連合会が自ら対処できるとの制度構想にすべきである。

   すなわち、所属弁護士会の処置のうち懲戒処分に不服がある当該弁護士は連合会に審査請求できる二審制であるのに、連合会の処置としての懲戒処分は弁護士会としての最終審であり、これに対する不服申立は行政訴訟しかないからである。

 (2) ちなみに、昭和59年9月5日付日弁連中央法廷委員会策定の「処置請求等についての対処要綱(案)」は、対処管轄の第一次判断権は所属弁護士会が持つとする制度構想を採用している。(昭和59年9月5日付日弁連中央法廷委員会「調査報告」57頁)

 

3.第3条(連合会の調査)、第7条(弁護士会の調査)について

 (1) 第3条および第7条には、「調査は、当該弁護士、関係人、裁判所、検察官その他の者に対して陳述、説明若しくは資料の提出を求め、又は公判調書その他の関係書類を検討するなどの適宜の方法により行うものとする」としている。

   しかし、調査の方法については、より弾力的なかつ多様な運用を可能とする条文の表現にすべきである。

 (2) 東京弁護士会法廷委員会の委員経験者からの報告によれば、調査の方法として法廷委員が裁判所に身分を告げて当該法廷の傍聴をしたり、法廷委員会の調査を踏まえて弁護士会理事者が裁判所と協議を行ったりしており、そのなかで、裁判所が姿勢を改めたという事例もあったとのことである。また、弁護士の弁護活動についても、法廷委員と当該弁護士が相互に意見交換や話し合いを行ない、場合によっては会員集会を開催して会員間で相互に意見交換をするなかで、当該弁護士が自ら弁護活動の見直しを行ったこともあったとのことである。

 (3) 東京弁護士会法廷委員会のこれまでの実践を踏まえ、その活動の教訓が生かせるように、調査の具体的な方法について、より弾力性のある対処を可能とする条文にすべきである。また、規程の解釈・運用の手引には、具体的な実践例や多様な対処方法を明記すべきである。

 

4.第4条(連合会の処置等)、第8条(弁護士会の処置等)について

 (1) 規程(案)第4条および第8条の各第2項の「当該弁護士に対する意見を述べる機会の保障」は不可欠であり、同項の各但し書は削除すべきである。

 (2) そもそも、但し書にいう「意見を述べる機会を与えることが困難な事情がある場合」とは、いかなる事態を想定しているのか明らかでない。

   当該弁護士が意見を述べる機会に出頭しないことがあるかも知れないが、それは当該弁護士が自らの意見陳述権を放棄したものであって、弁護士会の判断で意見を述べる機会を与えないこととは別の問題である。適正手続の保障は、絶対的なものであり、例外は認められない。

 

5.第5条(連合会の通知)、第9条(弁護士会の通知)について

 (1) 規程案第5条および第9条の各第2項の条文中に「検察官の訴訟活動に対する意見」も明記すべきである。

 (2) ちなみに、昭和56年当時日弁連から各弁護士会に対してなされた「処置請求に対する処理要綱(案)作成の必要とその具体案についての諮問」に対し、東京弁護士会がまとめた処理方針(案)の六の(2)には、「裁判所の訴訟指揮に是正を求める必要がある場合または検察官の訴訟活動に是正を求める必要がある場合には、それぞれ適切な処置をとる」と記載してある。(1984年3月「東京弁護士会法廷委員会先例集」239頁)

(以上)

 


 

 

 別 紙

A

 

2005年12月26日

東京弁護士会

  会長 柳 瀬 康 治  殿

 

東京弁護士会 期成会

代表幹事 斎 藤 義 房

 

「開示証拠の複製等の交付等に関する規程(修正案)」についての意見書

 

 当会は、表記規程の本年12月2日修正版(以下、規程案という)および同日付「開示証拠規程―検討・修正ポイントの解説」(以下、「解説」という)について、下記のとおり意見をまとめましたので、日弁連に伝達していただきたく要望いたします。

 

 

1.規程案の第1条に「被告人の防御権及び弁護人の弁護権を保障し」との文言が加わったことを評価する。この加筆された目的が現実に保障できるのかどうかをさらに検討する必要がある。

 

2.「解説」によると、規程案の第3条、第4条を「行為規範」としており、これに違反した弁護士は懲戒処分の対象となるが、疑問である。規程案の第3条、第4条は、行動指針にとどめるべきである。

 

3.特に、規程案第4条第1項は、「(審理準備等のための)使用の目的を達成するために必要な範囲を超えて・・・秘密及びプライバシーに関する情報を伝えることのないように注意しなければならない」としているが、その内容は不明確であり、懲戒処分の構成要件としての厳格性を欠いている。

  すなわち、「審理準備等のための使用目的」の外延は必ずしも明確でないうえ、「目的達成に必要な範囲」は不明確である。また、「秘密及びプライバシーに関する情報」の概念は、職務基本規程第18条の概念と同一とされているが、実際の事案においては内容の限界が一義的に明確とは言えない。

  そのため、規程案第4条が「行為規範」とされ、その違反には懲戒処分が科せられるとなれば、特に、冤罪を社会に訴えたい事件の弁護人や、目撃証人探しを必要とする事件の弁護人において、弁護権行使の活動が制約させられるおそれを払拭できない。

  この点について、「解説」の4頁には、「目撃者を探すために駅頭でビラを配布する場合には、ビラに記載する情報の質及び量を目撃者を探すためのものに必要最小限にとどめる必要がある」との記載がある。この記述を読んでも、「必要最小限の情報の質及び量」とはどの様なものが不明であり、具体的事件を担当する弁護人は戸惑うばかりであろう。

  また、「解説」4頁には、第4条第2項の解説として、「実況見分調書の添付図面をインターネット上に掲載して目撃者を探す場合などにおいては、目的を達したと認めた後は速やかにインターネット上での掲載を終了することが求められる」との記載があるから、実況見分調書の添付図面ですら「秘密及びプライバシーに関する情報」に含めているように読める。この「解説」の内容を読む限り、弁護人の活動として許されるのはどこまでなのかが分からず、弁護人の活動の制約につながる危惧があることは否定できない。

 

4.また、「解説」の4頁によれば、例えば目撃者を探すために実況見分調書の添付図面が書かれたビラを駅頭で配布する場合などにおいて、ビラを受け取った人の中に特定できる人がいた場合には、弁護人は、その人に対し、後に返還等を求めねばならないことになる。

  この様なことまで弁護人に求めなければならないのであろうか。ましてや懲戒処分を科してまで弁護人に要求すべきことなのか疑問である。

 

5.以上の次第であるから、特に規程案の第4条を「行為規範」とすることについては、再検討を求めたい。

  あわせて、「解説」においては、特に規程案第4条について、弁護人がしてはならない活動ではなく、弁護人が積極的に行いうる活動の内容を紹介し、被告人の防御権及び弁護人の弁護権を実質的に保障する規程(案)であることを明らかにするよう求めるものである。

 

 

 別 紙

B

 

 

東京弁護士会選挙制度改革に関する提案書

2005年12月2日

法友会幹事長  山本剛嗣 殿

法曹親和会幹事長  山内堅史 殿

水曜会代表幹事  遠藤憲一 殿

 

期成会代表幹事  斎藤義房

T はじめに

本年2月の東京弁護士会(以下、東弁という)会長選挙において、期成会は臨時総会を開催し、立候補者の支持、不支持の決議をしたが、東弁選挙管理委員会からは、期成会総会の決定事項であっても決議の内容を期成会会員に書面で伝達することは選挙会規違反になると指摘された。

元来、一定の目的の下に結集した団体の機関決定事項をその団体の会員に速やかに伝達することは団体の民主的な運営上必要不可欠であるにもかかわらず、それが許されないとすることは問題と言わざるを得ない。

そこで、期成会は、「選挙制度見直し検討チーム」を置き、上記の問題の改善策と、併せて東弁の選挙制度全体の見直しの検討を開始した。今回の討議によって、選挙制度の本質についての理解を深め、抜本的改革についても議論の端緒ができたことは有意義であった。

しかし、抜本的な改革を行おうとすれば、長期の検討期間を要することになり、早急な改革の必要性に対応することはできない。今回提案する改革案は、選挙制度を全体的かつ抜本的に見直そうとするものではなく、当面緊急に改善を必要とする点を主眼とし、併せて若干の将来的課題についても提案するものである。

U 提案の基本的視点

  東弁の選挙運動に対する規制は厳しい内容となっており、硬直的とも思える会規等の厳格解釈の傾向が見られる。また、現行の東弁選挙会規等はIT技術の進展など時代の変化に合わない面もある。さらに、現行の立候補手続は煩瑣であり、納付金の負担もある。

そこで選挙制度をより合理化し、立候補者の経済的な負担を軽減するための改革を実現する必要がある。

  本提案は、このような視点に基づくものである。

 

V 提案の具体的内容

  ※かっこ内は関連条文を示すものであり、必ずしもその条文の改正を伴う趣旨ではない。

 1 早急に改革を実現すべき点

(1)      立候補の手続

   @ 納付金の撤廃(会規13条)

     現行の納付金の制度は、役員選挙について言えば、現在役員の経済的負担を軽減するために会が給与を支払っていることと相容れない。また、常議員選挙について言えば、無用の負担を候補者に強いるものである。よって、納付金制度は撤廃すべきである。

立候補の乱立を防止する趣旨であれば、役員選挙についてのみ、一定の得票数に達しない場合に没収する供託金制度に改めるべきである。

A        立候補手続の簡素化(会規9〜11条、運営基準)

     立候補届出書は候補者一人の署名・押印で足り、責任者の署名・押印を不要とする。さらに誓約書を廃止し、誓約文言を届出書に記載して一本化する。

立候補の届出は、責任者を指名(記名)したうえで、候補者みずから署名・押印した届出書1通を提出することで完了とする。

  (2) 選挙事務所

   @ 霞が関の弁護士会館内事務所は維持する。(会規27条)

     弁護士会多摩支部会館にも事務所を設けることについては、その意義は認められるものの、責任体制(責任の所在)の維持という観点から、なお検討を要する。

A        使用料の廃止

選挙は会務活動と位置づけられるので、名目いかんにかかわらず使用料は徴収しない。

  (3) 選挙運動

   @ 候補者の推薦又は選挙運動を行う弁護士会員の団体(以下、団体という)の機関決定事項等、団体がその構成員に対してする通知文書に対する規制は行わない。通知の方法としてはFAX、メールも認める。(会規26条、28条3項、運営基準)

     団体内の機関決定事項をその構成員に速やかに伝達することは、民主的な機関運営上必要不可欠であるし、IT化等を考慮すれば通知方法の多様化も容認すべきである。

A        ホームページによる肖像・文書の公開を認める(会規26条、28条3項)

IT化を考慮すれば、候補者自身がホームページを作成・公開し、そこに自分の肖像や政策などを掲載することは認めるべきである。但し、その内容をチェックする必要があるので、選挙管理委員会への届出及び承認を条件とすべきである。

B        候補者選考のための準備行為は8月1日からとする(申合事項)。

現在の申合事項によれば、10月末日まで一切しないこととされているが、役員候補者の選任には各団体とも苦慮するところであり、常議員についても同様である。また、候補者としても、政策の検討や当選した場合の法律事務所の態勢づくりなどの準備行為を早めにしておくことが必要になる。

  (4) 選挙管理委員会が主体となる公聴会等の見直し(会規16〜18条、運営基準)

   @ 選挙公報は、重要なものと認められるので、今後とも充実化して継続する(会規16条)。

   A 公聴会をディベート方式にするなど、立候補者の人柄・識見がよく分かるようにいっそう工夫する(会規18条)。

     東弁のホームページを利用して公聴会の内容を公開する。

   B 役員に限らず、立候補者が独自に設営する演説会・公聴会を1回に限らず認める。ただし、選挙管理委員会への届出及び承認を受け、選挙責任者が主催・管理するものに限定する(会規17条、18条、26条の2)。

  (5) 投票方法

   @ 弁護士会多摩支部会館での投票を認める(19条)

A        不在者投票の期間を延長する(会規20条の2)

 

2 将来の課題

  (1) 選挙運動の期間の伸長(会規25条の2、申合事項)

     これまでの選挙運動の期間については、選挙管理事務の負担と選挙期間中の会務活動の停滞(委員会室が選挙事務所に使用されることなど)を最小限にしようとする配慮から、期間を短縮する改正が行われてきた。しかし、今後の会員増を考慮すれば、選挙期間をある程度長くすることは必要である。

(2) 選挙の方法(会規4条、19条)

     郵便、電子情報による投票は時期尚早と考えるが、高齢者や病気中の会員等の投票が困難であることを考慮すれば、限定的導入を含め、将来的な課題として検討に値する。

(3) 選挙違反に対する制裁規定の整備(会規29条)

     当選無効等の制裁規定を整備する。

     現行規定は懲戒処分があったときに当選が無効となるだけであり、その他の制裁については具体的な定めがない。綱紀・懲戒委員会に代わる機関の設置、100日裁判のような規定も考慮の余地がある。

また、当選無効とするまでもない違反についても、選挙管理委員会の警告等を公開したり、供託金を没収するなどの制裁を定めることも検討に値する。

以上

 

 別 紙

C

 


東京弁護士会役員選挙にあたっての三会派申し合わせ

 

 法友会、法曹親和会、期成会は、本年1月30日に公示される東京弁護士会役員、常議員及び日弁連代議員選挙にあたり、次のとおり申し合わせた。

 

1.東京弁護士会役員選挙において、各会派の会員が他会派の選挙事務所で候補者の激励を行う際には、同選挙事務所での記帳にとどめ、カンパを行うことは廃止する。

 

2.東京弁護士会役員選挙事務所の経理担当者は、選挙事務所の受付窓口において、他会派会員からカンパの申し出があった場合に受領しないこととする。

 

2006年1月23日

 

法友会幹事長    山  本  剛  嗣

法曹親和会幹事長  山  内  堅  史

期成会代表幹事   斎  藤  義  房

 

 


 

 

 別 紙

D

 

 

 

2006年3月13日

法友会幹事長 山 本 剛 嗣 殿

法曹親和会幹事長 山 内 堅 史 殿 

 

期成会代表幹事 斎  藤  義  房

 

東京弁護士会役員選挙開票後の役員当選者あいさつ回りについて

 

 日頃、弁護士会の諸活動で御奮闘されておられることに対し、敬意を表します。

 さて、毎年2月に行われている東京弁護士会役員選挙の開票当日、各会派の次年度東京弁護士会役員当選者と各会派の役員多数が、相互に、各会派の選挙打ち上げ会場を訪れ、挨拶をするというのが恒例となっています。

 各会派の打ち上げ会場が離れているため移動に時間がかかること、挨拶回りの順序と時間の決定が必ずしも円滑にいかないこと、役員当選者や会派の役員が同じ様な挨拶を繰り返して行わなければならないことなどを考えると、これまでの慣行を改善すべきであると考えます。

 なお、次年度東京弁護士会役員当選者が、当選の御礼と決意表明を多くの会員に対して直接行うことは意味があると考えますので、そのことは残したいと考えます。

 具体的には、次の様な方法を提案いたします。是非ともご検討の上、ご回答いただきたくお願いいたします。

【第1案】⇒ 常議員選挙が行われた年度の方法

   クレオにおける常議員選挙の開票結果の発表直後に、選挙管理委員長から当選証書を受け取った次年度東京弁護士会役員当選者が、クレオにおいて、当選の御礼と決意表明を行う。

   クレオには、各会派の選挙関係者や次年度常議員当選者などが200名近く集まっているので、その前での挨拶は、効率的であり効果的である。

   なお、現在、理事者室で行われている選挙管理委員長からの当選証書授与についても、常議員選挙の開票結果発表の直後にクレオで実施し、その場で役員当選者が挨拶をするという方法もよいのではないか。

  (その後に、例年のとおり各会派ごとに打ち上げ会を行うが、各会派の打ち上げ会では、他会派の役員当選者の挨拶は行わない。)

【第2案】⇒ 常議員選挙も役員選挙もない年度の方法

   三会派が持ち回りで会場を提供する形式をとり、一つの会派の打ち上げ会場で、全ての次年度東京弁護士会役員当選者と各会派の役員が一堂に会して、一度だけ挨拶を行う。

 

 

第2 各種委員会報告及び次年度活動方針案

 

1 人事委員会

              

(1)概況

 2005年人事委員会は、江口公一委員長、桑原育朗副委員長の体制で始まったが、結局、多くの人事案件を執行部に依頼せざるを得ず、(今期のみのことに限らないかも知れないが)課題を多く残す結果となった。

 そもそも東京弁護士会人事委員は、当該年度の常議委員の中から推薦・選任される委員と、常議委員以外から(事実上の会派代表として)推薦・選任される委員とからなっているが、期成会からの東弁人事委員会への出席は、常議員以外の数名の委員と当会出身副委員長というお寒い状況であった。

 しかも、この事態を踏まえて、期成会人事委員会の開催・討議や、幹事会などへの出席報告がきちんとんなされていればまだ良かったのであるが、年度後半になり人事案件が焦眉の課題となることを見越して小林七郎事務局長がやんやの督促をするまで人事委員会は開かれず、幹事会などへの出席はほとんどなされないままで終わった。

 

(2)反省と展望

 委員の怠慢が責められても申し開ける余地はほとんどないが、あえて次期に繋げて考えれば、期成会における人事案件の基本的困難さ、および、人事養成政策の貧困さについて言及したい。

 期成会の会員の多くは、各種法律家団体に所属し、また、そこで当該団体の要職を占めることが少なくない。そうでなくとも、各種法律家団体の日常活動やいわゆる運動事件に従事し、会務活動に割くことのできる時間や関心が少ない。その他の会員としても、あまり会務活動に関心のない会員も少なくない。このような中で人事案件を依頼しようとすると、どうしても会の会合に多く出て来る会員や「頼みやすい」会員に依頼が集中してしまい、また、事務局長などの人的信頼関係に依存してしまう結果となる。さらに、最高裁裁判官や研修所教官の推薦、東弁内重要委員会の委員推薦などは、正直、人事委員会の手に余る。

 他会を参考にすることはあまり期成会には意味はないかも知れないが、他会の部では、幹事長経験者などが人事委員会の責任者に座り、比較的期の若い会員を系統的に各種委員会などに推薦して、弁護士会や会派の働き手に育成してきているように見受けられる。部や全期会などの組織が若手会員を会務や会派に引きつけている要素が大きいのであろうが、人事がその集約点となっているのではなかろうか。もちろん、最近は、他会派といえども綱紀・懲戒委員会などを中心に要請難が続いており、必ずしも他会派が順風満帆な訳でない。ただ、期成会の活動において人事問題をもう少し中心に据える必要がありはしないかと考える。

 その点では、期成会人事委員のみの会合ではなく、幹事会その他適切な全体的会合に出席してそこで議論をすること、期成会人事委員会の位置づけは、弁護士会からの人事案件を期成会に報告すること、決定された被推薦者をきちんと弁護士会に推薦する(あるいは、推薦されているかどうか確認する)ということに純化し、人事の検討・推薦は執行部を中心にした全体の課題とした方が良いのではなかろうか。

 また、期成会として、どの会員がどの委員会で活動しておられるか、また、その任期はいつまでかということを詳細に把握し、次の人事について会員と相談しておく体制は作れないものであろうか。

 さらに、今年度から東弁に新進会員活動委員会が新設され、期成会からも10名の会員を推薦している。同委員会は、単に若手会員の関心を弁護士会に繋ぐというだけでなく、弁護士会の企画や運営についても若手会員を主体として参画して貰うことを狙いとしている。期成会としても、新進会員活動委員会に推薦した10名を核にして、若手会員の参加と参画を図る仕組みを制度化すること、同委員会委員を含め、若手会員の人事養成を継続することを検討してはどうかと考える。

 

 なお、東弁人事委員会について述べれば、多くの人事案件では推薦を委員会に要請する案件が増えていること、会派に推薦を割り振る場合にもその人員枠が固定してきていることなどから、人事委員会での議論は、委員会や会派の推薦結果を追認する儀式の場、あるいは会派からの推薦を督促する場に堕しがちで、常議委員の人事委員が出席する意欲が薄らぐ。会派の「ボス交」の場にしないという点では大いに改善されているのだが、より本来の人事委員会の活動を考え、提言していく時期に来ていると感じる。

 その点で、2005年度に東京簡易裁判所の司法委員として日本国籍を有しない期成会所属会員を推薦したところ、裁判所が選任しないという事態が生じ、東京弁護士会として対処することとなっているが、こういった問題について、東弁人事委員会として継続的に検討・対処する必要がある。

 

(3)2006年度の活動

 当面は、従前の活動体制を継続せざるを得ないが、執行部との連絡の緊密化、人事案件の時期は毎年同様の時期であることから、弁護士会からの要請があって初めて動くのではなく、予め求められることが予想される人事案件について議論と準備を行うこと、会員の各種委員会(外部委員も含む)への就任状況の把握などを進めることが必要である。

 また、中長期人事懇談会の課題かも知れないが、中期・長期の人事案件に向けてどのように体制を作っていけばよいか検討を進めたい。

2 政策委員会

 

(1)2006年度政策づくりの経緯

 毎年の政策づくりが選挙公示のぎりぎりになってしまうということから、今年度は弁護士会の現状や課題について、早期から問題点を出し合い、議論をして練り上げた政策をつくろうという意気込みで始まった。5月には、前年度の政策を参考に新たな項目も加えて、原稿依頼をした。これを踏まえて夏合宿では、正規の合宿の終了後、司法支援センターと法曹養成問題について政策の議論をするという取り組みを行うことができた。その意味では早期の取り組みとして意味があった。

但し、早期に骨子だけの原稿依頼をし、秋になって本原稿の依頼をするというやり方には問題点もあった。来年度の政策という依頼なので、その後情勢も変化することも考えられ、気乗りがしないせいか原稿の集まりが悪い、骨子といってももともと字数がすくないためほとんどは本原稿のスタイルで、これに秋に新たな情勢を加えてくださいと依頼しても答えてもらえない、結果として一年中原稿依頼をしていたという感がある。原稿がなくとも議論すべき重要テーマは把握できるので、再検討する必要がある。

(2)2006年度の政策内容   

憲法問題が大きな動きとなってきたことや司法改革の実践が開始したことから、取り上げなければならないテーマが、昨年に比較して10項も増えてしまった。議論の末に、項目を削るよりも内容を充実させようということで、これまでタブロイド版で4頁の政策ニュースを6頁にすることにした。

 紙面の割付は、ここ数年司法改革問題をトップにしてきたが、改憲論議が高まる中で憲法・人権をトップにし、全体のテーマを「憲法擁護と司法改革の前進を」とした。

 総会での議論を経て、憲法擁護の立場をより鮮明にすることや未決の代用監獄制度問題等に大幅な加筆をするなど情勢の動きに合わせた修正を行った。

(3)政策づくりの今後の課題

@ まず、政策委員会の組織がうやむやなまま進行してしまったことは問題である。政策委員長以外には執行部がそのまま政策委員会というのが実態であった。執行部が全体の情勢を把握しやすいということで、そのような組織にすることはあり得るがその確認もないままであった。今後、組織を明確にする必要がある。

A 政策内容については、各分野で中心的に活動されている会員に執筆依頼をしているが、例えば業務対策など期成会の委員がいない委員会があるので、委員の配置を全体的に確認し、手当をする必要がある。

B いつも問題になるのが、会員の意見集約である。最終的には総会で確認することになるが、総会出席者に限りがあること、総会の前に十分目を通してもらうために余裕のある日程が必要であること、その配布方法をどうするかなどを検討しなければならない。

 

 

3 広報委員会

 

(1)2005年度の総括

@例年通り年3回「wa」を発行した。

 読まれる会報誌を目指し、@目次の工夫 A期成会企画を広く紹介するB期成会会員にできるだけ登場してもらうC内容について工夫等の方針を立てた。その結果、内容の充実をはかれたと思う。たとえば、新人紹介については、いろいろな特技の紹介であるとか、経験談などにより、単なる挨拶文ではなく、人柄のよくわかる内容になっている。

A広報委員会のメンバー拡充

 新たに、3名の方(脇田康司先生、森裕子先生、置塩正剛先生)に加わっていただき、拡充した。

(2)2006年度方針

 前期と同様、読まれる会報誌を目指す。

 

 

4 企画委員会

 

(1)2005年度活動報告(2005.4.1 - 2006.3.31)

@委員

委員長 濱田広道 副委員長 片山哲章

委 員 藤井眞人,中村忠史,上石奈緒,伊藤勝彦,三森敏明,坂田洋介,酒井桃子

 

A内容

○沖縄三線ライブ(坂田 濱田 5/24)実施

     参加者 弁護士  18名

         家族    1名

         事務局等 17名

         合計   36名

     2340円の黒字→企画委員会プール金口座へ

     ○会社法勉強会(5/17 6/14 7/12)

    第1回(濱田 伊藤 5/17) 

     テーマ 会社分割(講師:伊藤勝彦)

         取締役(同:相川裕)

      参加者:25名 懇親会出席者 12名

    第2回(濱田 伊藤 6/14)

     テーマ 同族会社の支配争い(講師:松村卓治)

         定款変更のアドバイス(同:町田正裕)

         参加者 20名 懇親会出席者 約11名

         懇親会会費250円→企画委員会プール金口座へ

    第3回(濱田 伊藤 7/12)

     テーマ 自己株式の取得(犀川治)

         敵対的企業買収(田川淳一)

      参加者:15名 懇親会出席者6名

○18 - 19期40周年祝賀会(片山 伊藤 6/10)

虎ノ門パストラルにて

出席者:対象期 12名

配偶者 11名

一 般 45名

        合 計 59名

      釣銭,補填用資金として,15万円用意したが,9万7857円は事務局に返還

○屋形船企画(酒井 濱田 7/26)

台風接近のため中止

○ワイン会(上石 9/ 29)

    四谷三丁目,サッカヴァンにて

   54期以前の弁護士 19名

    55期以降の弁護士  2名

    事務局       14名

   合計        35名

   会費残金1万3920円→企画委員会プール金口座へ

○58期新人歓迎会(三森 酒井 11/24)

    日比谷・松本楼にて

     司会 酒井(57期)・板根先生(57期)

出席者(1次会) 58期:18名

一般: 41名

合計: 59名

     同(2次会)   合計: 31名

     収支は,1次会が10万1907円の赤字,2次会が2万8525円の黒字で,トータルで7万3382円の赤字。

○新会社法パンフレット(齋藤誠,濱田広道,片山哲章,上石奈緒,茶谷豪,橋太郎,酒井桃子・作成期間11末〜2上旬)

  期成会員の主要な顧問先を念頭におき,中小規模の閉鎖会社にとっての重要な改正事項をピックアップし,その概要をコンパクトなパンフレットにまとめる。会員には無償で配布し有償で注文をとり,顧問先への配布等,業務に役立ててもらう。

○酒蔵見学(藤井 2/25)

     栃木、飯沼酩醸。21名参加(子供3名を含む)

 

B 結果・反省点

ァ)沖縄三線ライブ

盛況であったが,直前の駆け込み申込みが多く,貸し切りではなかったこともあって,料理,座席の確保に余裕がなかった。

イ)会社法勉強会

全般的に盛況であったが,最もトピカルなテーマの第3回の参加者が,他の回に比較して少なかったのは,参加者が自分の業務との関連性を重視したテーマを望んでいることの表れであろう。

ウ)屋形船                 

中止となったが,30名程度の参加が見込まれていた。

エ)40周年祝賀会

間断なく壇上でのスピーチが続いたせいか,バストラル側は料理をだすタイミングがつかめなかったようで,終了間際になって,立て続けに料理が出された。今後は,事前に,式の進行とは無関係に適宜料理をだしてもらうように言っておいたほうがよい。

オ)ワイン会,新人歓迎会,ともに盛況であった。

カ)新会社法パンフレット

11,000部印刷。

会員より3月15日時点で7200部(46事務所)の受注

弁護士会や裁判所の書籍売り場でも販売

このパンフレットは読みやすいという評判を得た

キ)造り酒屋見学

護摩供養までしていただいた。

ここでも「Wa」がよくできているということが評判になっていた。

 

(2)2006年度活動方針(2006.4.1 - 2007.3.31)

    ただし,年間計画は2005年10月を起点として策定

@ 委員

     委員長 安部井上  副委員長 片山哲章

委 員 藤井眞人,上石奈緒,三森敏明,伊藤勝彦,坂田洋介,酒井桃子浅賀大史

     ・濱田委員長は,期成会事務局長就任予定のため退任する。

・中村委員は,刑事弁護研究会を企画委員会の所轄から独立させ,同会の委員長となる予定のため退任する。

 

A 内容

     平成18年4月 実務に役立つシリーズT(20日・上石)

              条文から考える破産法と実体法(講師:上石)

          5月 同シリーズU(下旬ころ・三森)

              成年後見人体験記(講師:三森)

          6月 同シリーズV(藤井)

              交通事故・被害者側代理人のイロハ(講師:未定)

          7月 同シリーズW(伊藤)

              実務で直面する税務問題(講師,内容ともに未定)

             屋形船(実施するかどうか未定)

9月 ワイン会(上石)

         11月 59期新人歓迎会

     平成19年2月 酒蔵見学(藤井)

 

B予算

 ・企画委員会管理の資金として約10万8504円をプール。企画の会費割引分相当額を補填するために使用する予定。

・通常の企画補助費として、前年度と同様の予算をお願いしたい。

以上

 

 

5 ホームページ委員会

 

(1)1年間の活動

 一昨年に期成会ホームページを大幅にリニューアルした結果,とりあえずは,団体ホームページによく見られる程度の見栄えとクオリティを持ったものとなった。優秀な事務局がホームページ作成ソフトに習熟した結果,定期的な更新はすみやかに実行することができるようになった。

 ところが,これにすっかり満足してしまったホームページ委員会は,残念ながらその後長きにわたる冬眠状態に入ってしまった。トップページの更新記録を見ても,年度の初めにはひんぱんに情報が更新されていたのに,月を経るにしたがって次第に回数が少なくなっていく様子がよく分かる。

(2)ホームページの現状

 現在トップページには,「期成会とは」「活動報告・方針」「政策・提言」「諸日程」「リンク」「会員ページ」の6項目があるが,残念ながら余り更新されていない。会員ページは「期成会通信」「思い出」「会員名簿」「会員交流ルーム」の4項目があるが,これまた全体としてはあまりかわりばえがしない。

 サーバの運用は,「ファーストサーバ梶vの「オルテビズ1」コースで,「kiseikai.jp」のドメインを取得し,100メガバイトの容量,10アカウントのメール利用が可能で,月額1890円となっているが,残念ながら有効にその機能が活用できているとは言い難い。

(3)メールの活用

 これに対して,メールの利用は活発に行われており,週に数回の割合で「ご案内」「お知らせ」「お願い」などが速報として会員向けに送られている。全会員中66%,若い期の会員はほぼ全員がメールアドレスを持っているので,会員さえ開く気になってくれれば,情報発信効果は高い。よく見ると,メール末尾の事務局連絡先欄に,ホームページのアドレスも記載されているのだが,「詳しくはホームページで」というような利用がないため,残念ながら,ホームページへの誘導はまだうまくいっていない様子である。

(4)今後の課題−見たくなるホームページとは

 以上のように「残念,残念」としかいいようのない,活動「してない」状況であるが,一番の原因は「あまり需要がない」ということに尽きる。トップページのカウンターを見ても,更新している事務局以外はおそらく特定の人がちらほら見ているくらいである。

 したがって,とりあえずは,内容を充実させるため,会員がつくるホームページ,会員が関わる弁護団ホームページなどとリンクする,期成会でデジタル化された過去の情報をいつでも見られる倉庫として充実させる,などの作業に着手したい。他方で,各委員会等の現場において,情報発信源としてのホームページ利用方法を新たにご検討いただき,是非ホームページ委員会の冬眠を目覚めさせていただきたいと思う次第である。

 

6 業務対策委員会及びOJT法律研究部

                                        

(1)業務対策委員会の活動について

一人委員会である私が積極的に活動しなかったこともあって、今年度も次項のOJT法律研究部の活動をバックアップするだけの1年になってしまった。「OJT」については下記のとおり、研究対象も徐々に広がるなど地道に発展を続けているが、先輩会員からの具体的な事件の供給がまだ少なく、この点の克服が成功の鍵になる。

もともと期成会は会派として業務対策に積極的に取り組むという姿勢に欠けていたが、法曹人口の増加に伴って、特に若手の会員には将来の業務に対する危機感が強くある。OJTはこれに対する一つの回答であったが、かつて検討した外部法律相談やネットを利用した法律相談など、まだまだ事件を掘り起こす方法は沢山あるはずであり、当委員会もより組織化して、このような業務対策を積極的に行う必要がある。

 

(2)OJT法律研究部の活動について

@平成17年度の活動状況

ア)第4回部会(平成17年4月4日)

参加人数:13名

各部員から、OJT案件(印刷用インキをめぐる特許権侵害が問題となる事案、プリント基盤面取り機をめぐる特許権及び実用新案権侵害が問題となる事案)、知財センターの判定に立ち会った時の状況等について報告がなされた。

イ)第5回部会(6月6日)

各部員から、知財センターの概要等についての報告がなされた。

ウ)第6回部会(7月25日)

    参加人数:11名

徳住堅治会員から、労働審判制の概要、個別的労働紛争の状況についての報告がなされた。その後各部員から、OJT案件(特殊型耐火スクリーンをめぐる特許権侵害が問題となる事案、紙揃え機模倣機械製造販売事件をめぐる不正競争防止法(周知表示混同惹起行為)違反が問題となる事案)等について報告がなされた。

エ)第7回部会(9月16日)

    参加人数:16名

山内一浩会員から、労働事件について、先取特権の行使・残業代請求に関する講義がなされた。その後、部員から、紙揃え機模倣機械製造販売事件をめぐる不正競争防止法(周知表示混同惹起行為)違反が問題となるOJT案件についての報告がなされた。

オ)第8回部会(10月17日)

    参加人数:10名

山内会員から、前回に引き続き労働事件について、雇用・退職事件の対処のポイントに関する講義がなされた。

カ)第9回部会(11月17日)

    参加人数:8名

石井麦生会員から、医療過誤事件の相談を受けた場合の事件処理のポイントに関する講義がなされた。

キ)第10回部会(平成18年1月26日)

    参加人数:12名

小林政秀会員から、先物取引の相談を受けた場合の事件処理のポイント,先物取引の基礎に関する講義がなされた。また、部員から、OJT案件(商標に関する訴訟案件)の経過報告がなされた。

ク)第11回部会(3月15日)

    参加人数:17名

小林会員から、前回に引き続き、先物取引に関する実践的な講義がなされた。

以上の「部会」における活動のほか、希望者が日本労働弁護団の法律相談活動にも参加した。

(3)平成18年度の活動方針

OJT法律研究部が発足してから1年半近くが経ち、活動が定着しつつある。近時は、ベテランや58期の新人が数多く参加するなど活況を呈している。

平成18年度は、このような状況や、同部会が委員会に昇格したことを受け、OJT活動が単なる勉強会に留まることなく、より実践的なスキルアップの場になるよう、より大規模かつ積極的な活動を行い、OJT案件の発掘に努めて、活動の場も期成会内に留まらず、外部へと広げて行きたいと考えている。

 

 

7 憲法問題プロジェクトチーム

 

(1)委員  四位直毅 池田眞規 飯田幸光 木村晋介 山本真一 澤藤統一郎 鈴木尭博 二瓶和敏 海老原信彦 川上詩朗

(2)期成会会員の日弁連・東弁の憲法関係委員会での三役就任状況

@日弁連憲法委員会     四位直毅副委員長

A東弁憲法問題等特別委員会 山本真一副委員長、中本源太郎副委員長

(3)日弁連での2005年以降の主たる活動

2月18日 憲法改正国民投票法案に関する意見書を理事会で採択

5月14日 憲法記念行事「今、問われる表現の自由・憲法21条」

11月11日 人権擁護大会で「立憲主義の堅持と日本国憲法の基本原理の尊重を求める」宣言を採択

12月08日 自衛隊のイラク派遣再延長に反対する会長声明

2月22日 パネルデイスカッションー問題点を検証する「憲法改正国民投票法案」

(4)東弁での2005年以降の主たる活動

1月13日 憲法改正国民投票法案に関する会員集会

4月25日 ベアテ・シロタ・ゴードンさんの講演会

9月20日 人権大会プレシンポ 憲法判断の回避、その論理、帰結と対応

9月20日 憲法改正国民投票法案に対する会長声明

(11月18日 自民党の新憲法草案を考える弁護士の集い)

12月26日 防衛庁立川宿舎イラク反戦ビラ投函事件高裁判決に関する会長声明

1月17日 東京都国民保護計画作成に対する会長声明

(5)期成会の2005年以降の主たる活動

6月01日 幹事会で衆議院憲法調査会報告書の報告と討議

7月01日 幹事会で自民党新憲法起草委員会各小委員会改憲要綱の報告と討議

9月09日 憲法改正問題を考える講演と討論の夕べ 品川正治氏の講演

1月10日 幹事会で自民党新憲法草案の報告と討議

(6)憲法問題プロジェクトチームの会議

4月28日(第1回会議) 6月15日(第2回会議) 

7月19日(第3回会議) 8月29日(第4回会議)

10月11日(第5回会議)11月14日(第6回会議) 

1月19日(第7回会議) 2月16日(第8回会議) 

3月15日(第9回会議) 

(7)まとめ

日本国憲法の改正問題が極めて重要な現実的課題となっている。憲法改正の中身については、集団的自衛権、人権とその制約原理、憲法裁判所、地方自治、教育問題などの個別的論点のほか、憲法が誰を護り誰を規制するためのものかという個人の尊厳と立憲主義を擁護する見地から弁護士会での十分な研究・検討とそれに基づいた会内合意の早期の形成が必要である。その会内合意を急ぐとともに一致点に基づく国民的な運動に弁護士・弁護士会が寄与しなければならない。期成会は、憲法改正国民投票法案や憲法改正の中身について国民に広く問題点を指摘し憲法を擁護・発展させるために努力する。

特に、期成会は、憲法問題に関する日弁連・各単位会での方針の早期確立と憲法問題対策本部の設置などを提言して運動に寄与して行く。

 

 

8 夏期合宿委員会

 

(1)2005年度総括

@目標とその結果

合宿委員が共有していた目標は、若手の多数参加であり、企画途中から欲が出て、若手とベテランという両極の出会いの場を設けようと心掛けた。

結果として、若手の多数参加はある程度達成できたが、ベテラン会員の参加はあまり多くなく、一挙両得とは行かなかったようである。

A参加者

1日目講演と研修・討議の延べ参加者は46名であった(講師の尾畑教授も研修・討議を熱心に聴講し、感銘を受けたと述べていたので、これを入れれば47名)。

上は18期から下は新人である57期までであるが、57期5名の参加があったことを特筆したい。これは、50期台である合宿委員(委員長以外全員)の努力の成果であり、また、57期のみ往復旅費を会で負担することにしたことも寄与したかもしれない。

2日目午前の討議の参加者は39名、午後の拡大政策委員会の参加者は20名であった。

B日程

毎年お盆との関係をみながら日程調整するわけであるが、今年度は、例年のように日曜日から月曜日にかけてではなく、金曜日から土曜日にかけての日程となった。2日目の参加者が急いで帰る必要に迫られる可能性が減るのではないかと予想したが、2日目午後の拡大政策委員会にも意外に多くの会員が残ったことをみても、予想は的中したのではなかろうか。

但し、会場の貸し切りが困難となったため、相部屋が多くなり、会員が若干窮屈な思いをされたのではないか。

C企画内容

ア)1日目

a)講演「確率論と社会 ―― ギャンブルからネットワークへ」

東北大学情報科学研究科教授 尾畑伸明氏

数学者の講演ということから、アレルギー反応を含め、事前に様々な議論を呼んだが、少なくとも難解ではなかったと思われる。

b)研修・討議「各専門分野の現場から」

医療専門弁護士をめざして(石井麦生会員)

欠陥住宅事件について(谷合周三会員)

労働事件へのお誘い(山内一浩会員)

渉外法務(立石則文会員)

上記4会員には、短時間の中で講演をお願いしたにもかかわらず、大変密度の濃い講演をしていただいた。伊澤合宿委員のてきぱきとした司会にもかかわらず、質疑応答や討議などの時間は必ずしも十分にはとれなかったが、若手にとっては刺激になったのではないかと考えている。また、期成会にはなじみの薄い渉外法務についての立石会員の講演は、単なる渉外事務所の職務の解説ではなく、日本の司法全体の現状をも抉る内容で、終了後、ベテラン会員から、合宿だけではもったいないから、また日を改めても討議をしてはどうかとの意見が出たほどであった。

c)懇親会

アトラクション:期成会クイズ

ベテランと若手をつなぐという前記目標を達成しようと、テーブル対抗で期成会クイズを行った。黒澤合宿委員、高木一昌会員の味のある司会で、予想以上に盛り上がった。

イ)2日目

a)討議「期成会今年の論点」

日本司法支援センター問題(亀井時子会員・桑原周成会員)

法曹養成問題(立石則文会員・三澤英嗣会員・中西一裕会員)

弁護士会多摩支部の現状(関島保雄会員)

橋本政策委員長の司会により、上記3つの問題について、直近の現状が報告された。

時間の制約から、必ずしも十分な質疑や討論の時間はとれなかったが、現場で奮闘されている会員の報告であるため、説得力があった。日本司法支援センター(この名称が問題との指摘もあったが)も法曹養成も、「人を出す」ことが必要とされ、その意味では討議よりも実践が問われる問題である。

b)番外 ―― 拡大政策委員会

改正刑事訴訟法に関する日弁連の規定等(桑原周成会員・合田勝義会員)

日弁連案を読み込んでみると様々な疑問が出てくることがわかり、明確化のためには有意義な議論がなされた。

東弁選挙会規改正問題(並木政一会員)

プロジェクトチーム案について議論され、現時点において大方が賛同できる内容と今後議論を進めるべき内容とに分けてまとめることとなった。

D収支

別紙のとおりである。例年どおり赤字ではあるが、会員の篤志と事務局の努力により赤字幅は縮小した。来年度以降、さらなる縮小を期待したい。

E最後に

本年度の合宿委員は、下記のとおり、委員長以外全員50期台であったが、闊達に議論をし、それぞれが重要な役割を担って活躍した。また、事務局の根本好文さん(日比谷シティ法律事務所)は、合宿初体験にもかかわらず、同事務所の国分さんの助力も得て、全体を取り仕切ってくれた。この場を借りて感謝の意を表します。

大森顕・黒澤圭子・松村卓治・伊澤大輔・高橋太郎・(懇親会司会)高木一昌(敬称略)

 

(2) 2006年度夏合宿委員会御中

上記総括の中で触れたが、以下のような点を参考にされたい。

@ 引き続き若手会員が多く参加するよう努力するとともに、ベテラン会員も参加しやすい環境作りに留意すべきであると考える。

A 若手会員の参加を得るために、まず、合宿委員を若手会員にすることが必要かつ有益である。また、新人会員の旅費を会が負担したことは功を奏したと思われるので、2006年度においても検討されたい。

B 金曜日から土曜日にかけてという日程は、2日目の早退者を減らす効果があったと考えられる。但し、ゴルフも含めると平日がつぶれる日数が増えるので、日曜日から月曜日にかけてというこれまでの日程との優劣は一概には決められない。いずれにしろ、2005年度において貸し切りができなかった反省からも、早めの会場予約が必要である。

C 企画については、毎年知恵を絞る問題であるから、2006年度委員会において良い企画を練っていただきたいが、若手合宿委員の柔らかい発想を促し、尊重することが有益であると考える。


9 弁護士任官推進本部

 

(1)本年度の活動

@ 期成会内アンケート(自薦・他薦((常勤裁判官、非常勤裁判官)を実施した。

2005年6月に実施したが回答少なく、夏期合宿にも再度実施した。回答数は少ない。

各弁護士の自覚を待つだけでなく、事務所単位で任官問題を議論し事務所の方針に位置づけて頂く必要がある。

A 非常勤裁判官シンポジウム

2006年1月17日に実施した。

パネリストは、紙子達子さん(家裁)、金澄道子さん(家裁)、山本政明さん(簡裁)。みなさんベテランの味を発揮していろいろ工夫し、調停を変えつつある状況が生き生きと語られた。そして、裁判官と話をしたり、裁判所の情報にアクセスできるため、弁護士業務にも非常に役立っていることが実感を持って語られ、聴衆の興味を引いた。懇親会には、水野邦夫裁判官にも合流していただいた。

B 任官ビデオ上映会

日弁連製作の弁護士任官ビデオが2005年5月に完成した。各単位会にビデオがある。期成会の水野邦夫さん、紙子達子さんも出演している。5月30日に他会派の任官推進担当者らとともに見た。

(2)実績

@ 通常任官 期成会では、水野邦夫さん(29期2002年6月東京地裁)、桑原宣義さん(29期2003年4月東京地裁)以来出ていない。

        引き続く候補者を是非出したい。

A 非常勤裁判官 紙子達子さん(2004年1月〜)

            金澄道子さん(2004年1月〜2005年12月)

            本橋一樹さん(2005年10月〜)

         今後毎年全国で50人位(東京10〜15人)の非常勤裁判官の輩出が必要になる。多くの弁護士に関心をもってもらい、継続的に出していくよう、期成会の取り組みも強化しなければならない。

B 他職経験受入 松尾総合法律事務所(2005年4月〜)

            東京パブリック法律事務所(2006年4月〜)

(3)次年度へ イベントをやり、経験者の話をドンドン聞くこと。

  

10 選挙制度見直し検討チーム

 

(1)チームの発足と報告書のとりまとめ

本年度の執行部の任命により、田中会長選挙の選対本部長であった堀野紀(17期)、同じく事務局次長並木政一(31期)、東弁選管委員会副委員長山本哲子(34期)、同じく前副委員長金井克仁(34期)を委員として当チームが発足した。

3月24日、4月28日、5月26日の3回の討議を経て、選挙運動の自由化を進めること、他方で最低限のルールについては効果的な規制(制裁)を行うこと、選挙事務を簡素化すること、多摩支部の設立にともなう会規の整備(一定の運動や投票を認める)を行うこと、IT技術の導入などの基本的な改革方針で一致し、現行の制度を抜本的に改める「東京弁護士会の選挙制度の見直しに関する報告書」をとりまとめた。

 

(2)その後の検討経過

この報告書を検討した執行部会および幹事会では、選挙の抜本的自由化によって金権選挙の再燃が懸念されるなどの問題があるので、当面の不都合を是正する改革と将来的な検討課題に分けるべきだとの意見が大勢を占めた。

その後、8月の夏合宿の討議においても同様の意見が多く出された。

さらに、報告書が期成会のメールで配信されると、選挙の浄化を期成会創立の理念とした草創期の会員に大きな波紋を投げた。そのため、10月18日、先輩会員との交流会を開催して意見交換を行ったところ、その席では昔の腐敗した選挙の実情が語られ、抜本的な自由化には多数の疑問が投げかけられた。

以上の会内討議経過をもとに、執行部の責任で報告書が書き改められ、幹事会に提案され承認された。その後、他の会派にも検討を依頼することとなった。

現在、各派においても前向きに討議されており、次の早急に実現されるべき課題については、次年度の選挙から実施できるよう動き出すものと思われる。

 

(3)早急に実現されるべき改革案について

@ 立候補の納付金を撤廃する。

A 選挙事務所の使用料を徴収しない。

B  会派内の連絡文書等に対する規制を撤廃する。

C 多摩支部での投票を認める。

 

(4)当チームの負け惜しみ

  選挙の抜本的自由化を提案した当チームの意見は、基本的な部分で骨抜きになり、将来の検討課題とされた。当チームは、選挙活動の自由化は東弁の民主主義の進展を表すものであり、会員数の大幅増加時代を迎えて、自由かつ活発な選挙運動が行われることは、会務問題を広く会員に浸透させるうえでも有意義であり、また、選管事務を大幅に簡素化することにも繋がると考えるものである。形骸化が著しい演説会等を改善することなく漫然と続けてきたなどに表れているように、実情に合わない硬直的な考えにとらわれては改革が進まないし、候補者に勉強させるために必要だという意見に至っては、選挙制度を考える視点ではないとすら思う。

  あえて議論を巻き起こす目的もあって一部に過激な改革案を提示したことは否定しないが、この種の改革は少なくとも10年単位のことであるだけに肝心な部分が時期尚早として骨抜きになったことは、当チームとしては残念であった。


第3 選挙報告

 

 

別紙ご参照ください。


3 日弁連会長選挙について

 

(1)日弁連会長候補者の評価に関する臨時総会の議論

  今年度の日弁連会長選挙には、東弁の平山正剛候補と高山俊吉候補、二弁の久保利英明候補の3人が立候補することになった。

この選挙に期成会としていかに対応すべきかを検討するために、昨年11月に、3人の候補予定者にあらかじめ質問事項書を交付した上で各別に候補予定者から政策を聞く会を持った。

そして、昨年12月2日の臨時総会において、総会出席者の意見を出し合ったうえ、3人のいずれが日弁連会長にふさわしいと考えるかについて出席者全員の意見を確認したところ、以下のようになった。

  @平山正剛 −28名

 A高山俊吉 − 3名

B久保利英明− 0名

C棄権   − 3名

   各候補予定者に対する評価に関してはおおむね次のような意見が出された(以下、総会議事録による)。

【平山正剛】

(積極面として)

・司法改革に当初から取り組んできたことが評価できる。

・司法改革をはじめとする各政策に私心なく誠実に取り組む姿勢が評価できる。

・人を束ねていく力が評価できる。

・司法改革で生まれた諸制度を実現しているための人材を適切に当てはめていくことができる。

・平山さんは、二人の兄弟を戦争で亡くし、母親から反戦教育を受けたという経

験から戦争反対・護憲の立場においてもブレがないと期待できる。

・実行力、アイディアを生む力が評価できる。公設事務所の構想は平山さんがアイディアを出したことでスタートした。

(消極面として)

・人柄が表に出てこない、わかりにくい。

【高山俊吉】

(積極面として)

・司法改革のための様々な制度が具体化されつつあり、問題点もより鮮明になっていきたので、司法改革の危険性・問題点について期成会としても認識を共有することができるのではないか。

・愛嬌・ユーモア溢れる人柄が評価できる。

・憲法改悪には命がけで反対しようとする姿勢が評価できる。三人の中でも際立っている。

(消極面として)

・司法改革自体を否定する意見を持っているのは、日弁連会長として適任とは言い難い。

【久保利英明】

(積極面として)

・政策が明確で、強いリーダーシップが期待できる。

・若手の弁護士からの大きな支持を得ているようだ。

(消極面として)

・いくつかの政策の実現方法として「自分が話をつけてくる」旨の表現があるが、本当に可能なのか疑問である。

・弁護士会における活動歴が少ない。

・個人プレーが強すぎるのは、司法改革の実現のために各関係機関と協議をしていかなければならない今の時期の日弁連会長としてはいかがであろうか。

・日弁連の委員会予算の削減を打ち出しているが、日弁連活動の実情を正しく捉えた提案であるのか疑問である。

 

(2)期成会の支持決議

本年1月10日の期成会臨時総会において、日弁連会長選挙に臨む方針について討議した結果、@いずれかの候補について支持決議をするか否か、A支持決議をする場合はどの候補を支持するか、という2段階に分けて採決をすることになった。

@    支持決議をすべきか否かの採決結果は以下のとおりであった。   

支持決議をすることに賛成   30名   

支持決議をすることに反対    1名   

保   留           2名 

A    どの候補を支持するかについての採決結果は以下のとおりであった。   

平山正剛候補を支持する    29名   

高山俊吉候補を支持する     1名   

久保利英明候補を支持する    0名 

以上のとおり、期成会は圧倒的多数で平山正剛候補を支持することを決議した。

 

(3)選挙結果

 

 略


第4 東弁、日弁連、関弁連活動報告

 

1 東京弁護士会活動報告

 

(1)司法支援センター開設へ向けての活動

司法支援センターが、本年4月より発足することになった。同センターは、司法改革の大きな目玉であり、今年度の活動の会活動の中心課題の一つであった。同センター関連では、今年度@同センター本部及び東京事務所の人事及び設置場所を巡る問題A公的弁護制度問題B自主事業の委託問題Cスタッフ養成事務所確保問題などに取り組んだ。

@          に関連しては、人事面では、本部理事2名と理事待遇1名及び事務局長が弁護士、東京事務所所長、副所長、事務局長の殆どを弁護士が占めるだけでなく、日弁連と東京三会から相当数の職員を出向させるなど、今後弁護士会との太いパイプを作るべく、取り組みをしてきた。

また東京事務所については、四谷駅前への設置が決まっている。東京三会では、ワンストップ型の市民サービスを実現すべく、この東京事務所と同じビル内に東京三会の相談センターを開設する予定にしているが、東京三会の賃借できるスペースが些か狭くなり、現在の弁護士会で行っている相談全てを四谷駅前に移行出来そうにない。一部の相談機能を弁護士会に残さざるを得ず、そのための切り分けが今後の課題となっている。

A    に関しては、昨年12月7日の常議員会で「東京三会は、被疑者・被告人・特別案件の国選弁護人候補者名簿を調製し、これら名簿に基づき担当日を指定した担当表を作成した上、これら名簿と担当表を支援センターに交付する」「支援センターは、担当表に基づき罪名・経験年数等を配慮の上、担当弁護士の承諾を得て、国選弁護人を指名する」を骨子とする国選弁護人推薦に関する基本方針が採択された。この基本方針の具体化が喫緊の課題となっている。

B    に関しては、本年3月7日の常議員会で日弁連委託の方向が承認された。当初、支援センターへの委託を希望する単位会を日弁連がまとめて同センターに委託する日弁連一括委託方式が模索されていたが、同センターへの委託する自主事業が将来同センターの本来事業化することを目指して、日弁連委託の方向が決められた。だが、その場合外国人の権利委員会の「外国人相談などにかかる事件の相当数が法務省入管局にかかる行政手続やこれら手続きにかかる行政訴訟が占めているので、支援センターに業務委託するに当たっては相談者が相談や依頼に躊躇や懸念・不信を感じないようにすべし」との指摘は、きちんと受け止めるようにしなければならない。

C に関しては、東弁では、関係者の努力の結果、13のスタッフ養成事務所を確保することが出来た。しかし、スタッフ養成は、今年度は初年度であり、今後ともコンスタントに養成を続き続けていかなければならない。

 

(2)裁判員制度

 09年5月から始まる裁判員制度を見据えて、昨年10月に起訴されたイラン人の殺人未遂被告事件において、東京地裁で始めて公判前整理手続きが採用された。東弁では、この事件の弁護団に対して、人を送るとともにバックアップチームを発足させて、全面的に支援してきた。その中で、この手続きによる裁判が、弁護人にとって当該事件以外の事件を手掛ける時間的余裕を失わせる極めて過酷な手続きであること、公判前整理手続きにおいて、もし被告人が拘置所に勾留されていたら検察側提出にかかる証拠を被告人と打ち合わせをする時間的余裕がなかったと考えられること、夜8時頃まで掛けて証人尋問を行った翌日午前10時には論告・弁論が行われ、その日の午後には判決が行われたという経過を辿ったにもかかわらず、その判決が詳細を極めていたところから、公判前整理手続きの時点で既に判決の大枠が作られていて公判が単なるセレモニーに堕していたのではないかとの疑念が払拭できないことなどが、明らかにされた。

裁判員による裁判が始まるまでに、これら問題点の解消に向けて法曹三者の協議を重ねる必要がある。その際、被告人の防御権をないがしろにした単なる迅速裁判にならないように最大限の力を傾注する必要がある。

 

(3)公益活動の義務化問題

 今年度初めて、公益活動を行なわず、会務活動等負担金も納付しなかった会員の氏名を公表した。その過程で、公益活動等に関する会規にいう「公益活動等」を巡って会員間の認識が一致していなかったことが明らかになった。そのため、同会規の目的を「社会的責務としての公益的活動を継続するために必要な弁護士会員の会務活動への参加を定めることを目的とする」旨の改正案が俎上に上っている。

 

(4)新宿地区・東京簡易裁判所民事調停センター設置構想

 昨年5月10日、東京三会会長名での東京地裁宛要望を皮切りに、この1年新宿地区への新たな調停センター設置へ向けて精力的に取り組んできた。その結果、新宿区議会が東京三会の陳情を採択して最高裁宛意見書を送付するなどの動きも出てきており、このような動きを受けて、当会でも2月7日の常議員会において「新宿駅近くに東京簡易裁判所民事調停センター設置を求める決議」を採択した。東京の人口重心が杉並区に位置していることも踏まえるならば、新宿地区への新たな調停センター設置は都民の利便性を大いに高めるものとして、引き続きこの取り組みを強める必要がある。

 

(5)会計規則の改正

 従来、東弁では、公益法人会計基準には存在しない「繰越金」「剰余金」「不足金」という制度が存在するため、赤字予算で黒字決算という極めて分かりにくい予算が組まれていた。また、会計ソフトで処理されたデーターを更に手計算で再処理しなければならないため、経理の事務量が増えるだけでなく、集計ミスや転記ミスを惹き起こす原因となっていた。

 そのため「繰越金」「剰余金」「不足金」を廃止し、次年度の予算は公益法人会計基準に基づいて組むことにし、「繰越金」「剰余金」を「繰越収支差益」として収入計上した上、「職員退職金積立金」「事業準備等積立金」への積み立てとした。長年の懸案に一つの回答を出したものである。

 

(6)多摩支部問題

 多摩支部に関しては、@立川の支部会館用地取得問題、A支援センター八王子支部の体制構築、B第4公設事務所設置問題、C事務局体制の問題など課題が山積している。@については、残念ながらいまだ明確な進展は見られない。Aに関しては、期成会の杉井厳一会員が支部長に就任する予定になっている。速やかに支部長をサポートする体制を構築する必要がある。Bについては、必ずしも若手会員が積極的でないとの声も聞こえてきている。もっと深い討議が必要であろう。Cについては、3会の事務局間で事務処理上の指揮命令関係が形成されないままになっているため業務上の不都合が生じている。今後とも、その克服に向けての努力が求められる。

 

(7)各種悪法反対の取り組み

 東弁は、5月19日付けの少年法等「改正」案に反対する会長声明、9月20日付の国民投票法案に反対する会長声明、10月18日付の共謀罪の新設に反対する会長声明、国民投票法案に対する会長声、本年3月14日付けゲートキーパー立法(弁護士による警察への依頼者密告制度)に反対する会長声明など、この1年間各種悪法に反対する声明を発してきた。引き続きこれら悪法に対する取り組みを強める必要がある。 

 これら以外にも、懸案の未決拘禁法案が通常国会に提出されている。残念ながら、代用監獄廃止の方向性すら明示されていない。少なくとも代用監獄存廃の検討開始の付帯決議を勝ち取り、代用監獄の漸減への足がかりだけは確保しなければならない。また、ゲートキーパー法に関しては、対策本部を作り、来年の通常国会への法案上程を阻止すべく運動を強めることにしている。期成会も対策本部に結集して活動に取り組む必要がある。

 

(8)人権擁護の取り組み

 東弁では、12月26日付け防衛庁立川宿舎イラク反戦ビラ投函事件高裁判決に関する会長声明や本年2月23日付け横浜事件に関する会長声明を発するなど、表現の自由の観点から見過ごすことのできない判決に対し、積極的に会長声明を発表してきた。これまで個別事件の地裁・高裁段階の判決に対して会長声明を出した例はなく、その意味で従来の立場から一歩踏み込んだものである。

それ以外にも人権擁護委員会や子どもの権利委員会などでは、人権救済のための地道な活動を行ってきた。ただ人権擁護委員会の関係では、余りに申し立て件数が多すぎて処理しきれない状況が生じており、速やかに対策を考える必要がある。

 

(9)来期への課題

 いよいよ4月1日から公益通報者保護法が施行される。東弁でも消費者委員会が中心となって公益通報者窓口設置へ向けて協議を重ねてきた。来る4月12日には、東京三会で公益通報110番を計画している。どの程度の相談があるか掴みかねているが、この制度が内部通報者の保護を通じて消費者の権利の確保等へ向けて大きな役割を果たすことが求められる。

 また弁護士会は、受刑者処遇法により設けられる刑事施設視察委員会の委員に刑事施設の運営の改善向上に熱意を有する者を推薦していかなければならない。各刑事施設側から弁護士会の人権擁護委員などは避けてほしいと要請されてた事例が報告されているが、このような動きには断固反対していかなければならない。併せて、弁護士委員のバックアップにも取り組む必要がある。

 

2 東京弁護士会監事報告

 

(1) 本年度の年度当初には,多摩移転問題のほか,霞ヶ関弁護士会館大修繕(10年目),OA刷新基本計画等々,多額の支出が予想される問題が山積していた。

しかし,多摩移転はまだ具体的な方向性が確定しておらず本年度の支出はない。会館大修繕,OA刷新についても,本年度の支出は予算を下回ることになりそうである。いずれも次年度以降の大きな問題ということになる。

(2) 本年度は5年に1度の実地照合調査(棚卸し資産調査)の年にあたったため,これが監事の仕事の主要なものの1つとなった。5年前の調査以降,各地の相談センターや公設事務所がふえていたこと,5年前の調査時の資料の保存が充分でなかったことなどから,担当職員も監事も,正直かなり苦労をした。

(3) 本年度は,東弁会計規則について根本的な改正がおこなわれ,「繰越金」「剰余金」が廃止され,特定積立預金が新設されるなど,公益法人会計基準にのっとった会計システムに整備された。「わかりやすい財務」(財務の透明性)という観点から,まことに意義のある改正であったと考える。

(4) 東弁財務については,単年度ごとの枠ぐみをこえて,より長期的な視野にたった改善の検討が必要であると考える。財務委員会を中心に検討の準備がはじまっており,次年度に長期的な見直し,検討がおこなわれると思われる。

 

 

3 常議員会報告

(1) 常議員団の構成及び役割分担

  @常議員の構成

    2005(平成17)年度の期成会常議員団は次の13名で構成された。

関島保雄(27期)、立石則文(31期)、小林政秀(34期)、大森秀昭(39期)、吉村清人(40期)、神田高(44期)、小林容子(48期)、伊藤方一(50期)、永野靖(53期)、西田美樹(54期)、細田はづき(55期)、久保木亮介(56期)、高木一昌(57期)

    ちなみに、期成会の常議員の当選者は、14名から13名に減少してから、ここ数年は13名で推移している。

  A常議員団内での役割分担

   今期の常議員団内での役割分担は次のとおりである。

  ア)団長:関島保雄

団長は、期成会常議員団を代表するもので、対外的にこれを代表する。なお、期成会の執行部員の一員である。

  イ)副団長:立石則文

今期は、団長が多摩支部出身であることから、副団長をおき、団長を補佐した。団長同様執行部員の一員である。

  ウ)事務局長:伊藤方一

事務局長の役割は、主に期成会常議員団内の会議等を運営し、期成会執行部との意見調整・連絡等を行い、常議員会報告書の発行責任者である。なお、団長、副団長とともに執行部の一員となる。

  エ)事務局次長:久保木亮介、高木一昌

事務局次長は、二人体制で事務局長を補佐する。主な役割は期成会常議員団の連絡等(今期は前期に引き続き、常議員団関係者のメーリングリストを作成した)、常議員会の事前打ち合わせ会場(東弁会館内)の手配、昼食の手配等である。

  B東弁内の常置委員会での常議員の配置

  ア)人事委員会

       小林容子(48期)、立石則文(31期)

  イ)常議員会内入退会審査特別委員会

小林政秀(34期)、大森秀昭(39期)、吉村清人(40期)、伊藤方一、(50期)、久保木亮介(56期)、高木一昌(57期)

  ウ)常議員会内人事銓衡委員会

       永野靖(53期)、細田はづき(55期)

  エ)常議員会内国選推薦停止不服申立調査特別委員会

       神田高(44期)、西田美樹(54期)

  C期成会幹事会への出席について

 前述のように、団長、副団長及び事務局長は期成会の執行部会のメンバーであるが、常議員は全員が期成会の幹事であり、幹事会に出席することになる。

 そこで、今期は前期に引き続き、常議員1人ずつ当番を決め、輪番で幹事会に責任をもって出席することにした。しかし、実際には十分な出席を確保できなかった。

 幹事会の内容は、執行部から期成会会員全員に電子メールで送付されるため、常議員団から当番で出席するという形態は、出席の動機付けとしてはあいまいとなっていたように思われる。多忙な中で出席を確保するためには当番制は最低限必要であろうが、東弁会務の実情を把握し、議論を活性化するためという本来的趣旨を確認し、当番以外の出席も促されるべきであろう。

(2) 常議員会の日程と内容

  @常議員会の日程

   常議員会は、原則として毎月7日の午後1時から5時に開催された。

   今期は、次のように臨時を含めて13回開催された。

4月7日、5月9日、(5月17日(臨時会)は中止)、6月7日、7月7日、9月7日、9月27日、10月6日、11月7日、12月7日、1月11日、2月7日、3月7日、3月27日

  A各常議員会の内容

 詳細は、常議員会報告(期成会のホームページに掲載される)に記載されるので、これに譲る。

  B常議員会における討議等の感想

ア)司法改革に対するスタンス・立場の違いは解消されず、司法改革に関連する議案については、特定の常議員から、理事者提案に反対する意見が強く主張された。なかには原理原則論もあり議論がかみ合わない場面もあったが、司法改革の抱える問題の理解を深める上では有益なものも多い。こうした特定の常議員の活発な発言に押され、その他の常議員の発言は一般的には低調であることは否めないが、期成会常議員団は、毎回必ず誰かは発言し、議論・討論の活性化に寄与した。

イ)常議員会の議題及び資料は、約1週間前に郵送されるが、当日配布されるものも少なくなく、議案の問題点及び論点を事前に正確に把握することは容易ではない。さらに、理事者側から、議題に関するすべての資料が提供される訳ではないので、情報量において常議員は理事者と格段の差がある。

    そこで、期成会出身の副会長から、議題に関するコメントをいただき、常議員関係者のメーリングリストに流し、常議員会開催当日の午前11時から弁護士会館内会議室において、昼食を取りながら、当日の議案に関し、期成会出身副会長、期成会執行部三役と情報、意見交換を行って、常議員会に備えた。

    それでも、十分とはいえないので、期成会幹事会への出席等、会務に関する情報収集を日頃から心がける必要があると思われる。

  C出席状況

    常議員会の出席状況については、現在、全員の分が毎回配布される資料と一緒に送られてくる。常議員会への出席率向上に貢献していると考えられている。全体的には、およそ8割の出席が確保されている。しかし、午後4時以降は途中退席する常議員も見受けられる。

   期成会の常議員は、皆勤3、精勤8である(平成18年2月7日現在)。

(3) 常議員会の事前打ち合わせ

  @副会長等との事前打ち合せ

    前述のように、今期も常議員会に臨むにあたり、常議員会当日の午前中(原則は11時から、議題が少ないときは11時半、12時など適宜)に弁護士会館内の会議室で昼食を取りながら事前打ち合わせを行い、繻エ副会長等から説明を受けて、常議員会に臨む方針等を議論した。なお、この打ち合わせには、期成会執行部から、代表幹事、同代行、事務局長などが出席して討議に参加した(したがって、常議員団関係者メーリングリストには加入して頂く必要がある。)。議案内容の把握のためには、この打ち合わせへの参加は必須であろう。

  A準備等

    この打ち合わせの、場所及び弁当(注文数)の手配及び連絡は、事務局次長が行った。

  B改善点等

    常議員会の議論を実りあるものにするためには、早めに常議員が議案の問題点及び論点を正確に把握し、十二分に検討できる時間が不可欠と思われる、そのためには、前述の事前打ち合わせでは、遅きに失する感がある。前述の特定の常議員は、きわめて熱心に情報収集及び分析を行っているものと認められる。繰り返しになるが、日頃から会務に関心を持ち、期成会の幹事会への参加を通じて、情報収集に当たることが重要である。

    これまで会務に親しんでいない場合には、何から議論してよいかわからず、つまらないことをいっては恥を掻くのではないかと遠慮したくなる心理は理解できるので、気安く情報や意見を交換できるようにとメーリングリストを作ったつもりではあったが、実際にはほとんど事務連絡程度にしか利用できなかった。理事者から提案される議案は、所定の手続きを踏んで議論としては煮詰まったものであるのであるから、逆に一般会員の素朴は感覚をぶつけてみるというのが常議員会であるといってもよいと思う。さりとて、いきなり議場では勇気もいるであろうから、もっと期成会の常議員団内で、気安く(特に若手の)意見を交換できる雰囲気作りを意識的にすべきであったと思う。次期常議員にはこうした反省点を生かしていただければ幸いである。

(4) 常議員会報告(ニュース)の発行

  @常議員会報告(ニュース)の発行

    従来、毎回の常議員会について、その都度報告書を作成し、期成会で活用されてきた。報告書については、団長を除いた(年度によって若干異なる)全員が輪番制(若い期から順番に)で作成に関わる。具体的には、常議員会の翌日の正午ころまでに担当者が起案した上で、常議員団関係者のメーリングリストにおいて事務局長宛に送信し、事務局長がそれに修正等の校正を行った後に夕方ころまでには期成会事務局(日比谷シティ法律事務所)にメール送信し、速やかに期成会員に常議員会報告をメールで配信する。 

    しかし、今期は時間的ルールを明確にしなかったこと、会議の当日担当者を確認し忘れるなどの不手際と事務局長の怠慢から、発行ができなかった回がかなりあり、反省している。

   次期の常議員団には、毎回の発行を期待する。

  A常議員会報告の期成会外での活用

    当初の方針では、常議員会報告は、各常議員が自分に投票してくれた無会派、他会派の先生に郵送等して、協力関係維持の手段にすることになっていた。前期は各常議員に委ねていたために実情を把握できていなかったので、今期は事務局長が集約して期成会の事務局から発送する計画であったが、常議員団内の意思疎通の問題と、事務局長の怠慢から、うやむやになってしまった。

    無会派の先生は、常議員会の報告はLIBRAに掲載される事務的な内容しかない(資料は4階会員室にある)ので、期成会会員ならではの感想をも含めた報告を送付することは有意義なことであると思われ、さらに今後の関係強化の上でも有効な手段と思われるので、その積極的な活用が是非追求されるべきである。その際、個人情報保護の観点から、各常議員と人的関係が強い先生については各常議員から、期成会そのものとの関係が強い先生には、期成会事務局から、後者の名簿は代々選対において引き継ぐなどの工夫が必要かもしれない。

(5) 今期の重要議題について

  @司法改革関連の議題は、つねに、意見が厳しく対立する。今期で特筆すべきものは、a、裁判所の処置請求に関する取扱規程(日弁連)に関する東弁の意見 b、開示証拠の複製等の交付等に関する規定(日弁連)に関する東弁の意見 c、司法支援センターの国選弁護人推薦に関する基本方針、d 司法支援センターの設立に伴う扶助協会の自主事業の取扱方針、などがあげあられる。

    いずれも、すでに基本となるべき立法(a,bは刑事訴訟法、c、dは総合法律支援法)がなわれており、それを前提にするのか、立法自体を否定するのかで議論がかみ合わない傾向が見られた。

    次期は、いよいよ司法支援センターが活動を開始する。いよいよ実務が動き始める。市民のための司法として作られたはずのものが、本当に市民のために動くのか、各常議員の肌で感じたことを常議員会の議論に反映できるようにがんばっていただきたい。

  A会館特別会費、予算などの審議では、弁護士会の果たす役割の大小を巡っても意見の対立を見る。たとえば、会館特別会費による特別会計は現在の弁護士会館のみを維持するには必要以上の規模に至っている。一部論者は、会員の負担をなるべく減らすように特別会費の額を引き下げるように求めるが、意見の大勢はこの財源を利用して、立川支部の新会館建設など、弁護士会が積極的に行う会員サービスや施策に利用することを許容している。予算に関しても、公設事務所の移転等への支出は一部否定的な意見が根強い。問題は、会員の会費を使用する弁護士会の諸施策について、会員の十分な理解を得ながら進めて行かなくてはならないということであろう。

  B予算決算の問題については、ここ数年、予算は赤字予算として作成され、決算の段階で無事に黒字に終わるという形を踏襲してきた。今期、東弁の会計規則を改め、前期余剰金を収入に組み入れることになったので、こうした不自然な状態は解消されると思われるが、各期の予算審議において、常議員会の果たすべき役割はより重要になったといえる。

 

 

4 2005年度日弁連理事会の総括的報告

 

(1)            はじめに

  2005年2月、期成会から推挙され、日弁連理事の選挙を経て、同年4月から、日弁連常務理事を務めさせていただいた。理事会は、本年3月に2回程予定されているが、すでに、毎月第3週の木金の2日間、既に計21回の理事会が開催され、終日会議が行われた。出席率は、理事として地方から出席する弁護士会会長を含め毎回ほぼ100%である。また、主査理事として憲法委員会を担当し、さらに、犯罪被害者等施策推進会議バックアップ会議の座長も務め、日弁連のパブリックコメントの取りまとめなどに取組んだ。東弁選出日弁連理事と東弁理事者との協議会も持たれ、毎回、理事会の議案を事前に検討し、重要議案に対する意見交換を行なった。理事になったおかげで、多くの時間を割くことになったものの、大変充実した1年間であった。

 

(2)                 日本司法支援センター

本年度は、司法制度改革により制度設計がなされた新しい制度の実行及び運営開始への準備の年となったが、その生みの苦しみを味わった一年ではないかと思う。2006年10月開業の日本司法支援センター開業の準備のための諸規則の制定、各地方事務所の規模、人的構成、その担い手であるスタッフ弁護士の確保等をめぐって、毎回、多くの時間を割いて議論がなされた。特に、2009年からの被疑者国選制度の本格的な実施を視野に入れた強力な取り組みが求められており、その対応に向けた態勢の確立が最大の課題となっている。

 

(3)                 裁判員制度と刑事裁判

裁判員法に関連して刑訴法の一部が改正されて、公判前整理手続が新設され、証拠開示制度が改革された。裁判員制度を円滑に実施するために、証拠開示制度を適切に利用し、必要かつ十分な証拠の開示を実現することが求められているが、公正で迅速な刑事裁判のために不可欠な「取調べの可視化」は、いまだ実現できていない。それが実現できなければ、自白の信用性をめぐって裁判は長期化し、裁判員制度が事実上の機能不全に陥ることが危惧されている。今こそ、日弁連が取調べの可視化の実現に向けて全力で取組み、強力な運動を展開することが緊急の課題となっている。他方、臨時総会で激しく議論された「裁判所の処置請求に対する取扱規程」と「証拠開示の複製等の交付に関する規程」が刑事弁護人の弁護権の行使を制約することのないように運用されることが要請される。

 

(4)                 憲法改正問題

イラクへの自衛隊の派遣など憲法の基本理念に抵触する事態が発生し、さらに憲法の明文改正の動きも顕著になる中で日本国憲法制定60年を迎えた。総選挙の結果、改憲勢力は3分の2以上となり、国会に憲法改正国民投票案が上程されようとしている情勢のなかで、第48回人権擁護大会において「憲法改正問題」のシンポが行なわれた。大変画期的なシンポで「憲法は、何のために、誰のためにあるか−憲法改正論議を検証する−」とのテーマで熱心な議論がなされた。大会では、「立憲主義の堅持と日本国憲法の基本的原理の尊重を求める宣言案」をめぐり、長時間にわたる激しい論戦が交わされたが、多数の賛成で宣言案が採択されたことが強烈な印象として残った。特に、宣言は、「憲法は、戦争が最大の人権侵害であることに照らし、恒久平和主義に立脚すべきこと」を確認し、その後に続いて、「日本国憲法第9条の戦争を放棄し、戦力を保持しないという徹底した恒久平和主義は平和への指針として世界に誇りうる先駆的な意義を有するものである」と謳い、強制団体である日弁連が日本国憲法の恒久平和主義の擁護を会内外へ明確に宣言し、その態度を鮮明にしたものと評価できよう。また、「憲法改正国民投票法案に異議あり」とのパンフを作成し、集会で配布するなどして、投票法案の問題点について積極的な広報活動を行なっている。期成会員をはじめとする会員の活発な議論と取組みが重要である。

     

(5)                 犯罪被害者等支援と刑事手続への関与問題

2004年12月に成立した犯罪被害者等基本法により、犯罪被害者の権利利益の保護を目的とする犯罪被害者等施策推進会議が設置された。同会において基本計画の検討が進められ、その検討結果に基づき、2005年12月、基本計画が閣議決定された。日弁連としては、@犯罪被害者等の損害の回復・経済的な支援、A精神的・身体的被害の回復・防止、B支援などの体制整備、C国民の理解の増進等への各取組みは、積極的に推進されるべきであるが、@「犯罪被害者が刑事手続に直接関与し訴訟行為を行なうこと」は、現行刑事手続の仕組みに整合しないことや、被告人の防御に困難を来たすおそれがあることから反対であり、Aまた附帯私訴や損害賠償命令についても、刑事事件と民事事件では立証責任の所在、自白法則、伝聞証拠の排除等で相違があり、両者を同一の手続きで行なうのは困難であるので、附帯私訴等の導入には反対であるとの意見書をまとめ、それを同会議に提出した。これらの問題は、今後法務省で検討し、2年以内に結論を出すことになったが、犯罪被害者の権利利益の保護を図りながらも、近代刑事裁判の原則を踏まえた議論が望まれている。

また、基本計画は犯罪被害者等の情報の保護(犯罪被害者の安全)を根拠に、「犯罪被害者を実名で発表するか、匿名で発表するかの判断を警察に委ねる」とした。しかし、被害者の匿名・実名の発表の判断を警察が行なうことは、報道機関の自由や市民の知る権利の観点から是認できず、また報道機関が犯罪被害者や市民から広く情報を得る手段が奪われることになり事実の検証が困難になるので、警察から情報の提供を受けたマスコミが自らの責任で報道する際に実名にするか匿名するかを自主的・自律的に判断すべきことであると考えるべきである。日弁連の公式的見解も同じであるが、それだけにマスコミが犯罪被害者に配慮した取材や報道をすべきでことは当然であり、その意味で、マスコミの責任は重い。

(6)        ゲートキーパー立法問題

弁護士に金融取引の門番(ゲートキーパー)としての役割を担わせようとする立法で、マネーロンダリング・テロ資金対策のため従来から規制していた金融機関に加えて弁護士などに対しても、疑わしい取引を国に報告する義務を課する制度である。弁護士制度の根幹にかかわる大問題であり、理事会においても最重要課題の一つとして取組んできた。

ところが、2005年11月、これまで金融庁とされていた報告先が警察庁になり情勢は一変した。警察庁への報告制度は、弁護士・弁護士会の存立基盤である国家権力からの独立を危うくし、弁護士制度の根幹を揺るがすもので到底容認できないとの決議に基づき、その反対運動の一環として、今年2月、多くの理事が衆・参議員会館に直接出向き、全国会議員に対し、ゲートキーパー立法制定反対の要請一斉行動を行った。政府は本立法を2007年の通常国会に提出することを決定し、立法化をめざしており、来年度の重要な課題である。東弁においてもゲートキーパー立法阻止対策本部が設置され本格的な反対運動を展開することになっており、ゲ−トキーパー立法(弁護士による警察への依頼者密告制度)に反対する会長声明を出す予定である。期成会員の積極的な討議と関与が期待されている。

 

(7) 未決拘禁者処遇法、日本司法支援センター開業に向けた具体的な課題、    少年法改正や教育基本法の改正等の重要問題も山積していが、それらの課題は次年度に継続になった。

(8) 最後に、理事会の雰囲気は比較的討議し易く、不十分ながら質問や意見を述べることが出来たことに満足している。現在の司法制度改革に不十分な点が多々存在することは確かであるが、理事会の議論を通して痛感したことは、それらに批判的な観点を踏まえつつも市民のための司法制度の改革に如何に積極的且つ建設的に取組むかが重要であり、今こそ、それが求められているということである。

このような貴重な体験をさせて頂く機会を与えてくださった期成会の会員の皆様に心より感謝している。

 

5 関弁連常務理事報告

 

1 関弁連の基本的問題点

(1) 東京高裁管内の東京三会と十県の単位会でなる関弁連は、管内弁護士数(12,641)が全国の弁護士数(21,200)の59%で、その内81%が東京三会で占める(全国弁護士の約半数)。日弁連のお膝元で日弁連を支えていると言う意識の強い東京三会にとって、関弁連は不要であるとの意見も聞かれ、他方弁護士の集中と過疎の悩みを抱える十県会からは東京三会が関弁連を軽視しているという批判も聞かれる。

(2) そのような中でも、関弁連の仕事は飛躍的に増えている。弁護士人口が急増する中で日弁連では手が回らない弁護士研修、入所前研修の実施(後者は今年度限り)、弁護士偏在問題解消のための対策づくり、裁判官候補者(常勤、非常勤)の推薦、裁判官選考検討など、日弁連でも単位会でも対応できない高裁管内の仕事とというものは、確かにある。

(3) 関弁連は日弁連や単位弁護士会と異なり法人格がなく、設置が任意の団体である。それ故に会員の帰属意識も低く軽視されがちである。しかし、他方で制約がないが故に自由にフレキシブルに活動しうるという利点もある。各弁連の実状に大きな隔たりがある今日、まずは実態を把握し、問題点を出し合って、そろそろ弁連の未来像を描こうという問題提起を、今年度関弁連から全国の弁連に投げかけた。弁護士人口の大幅増に伴い、単位会と日弁連の間で弁連が果たす役割が次第に見えてくるように思う。

2  関弁連の活動は多岐にわたるが、その中で特に常務理事として関わった活動について若干の感想を交えて簡単に報告する。

(1)  夏・冬に開催した地区別懇談会

地区別懇談会は、日弁連執行部と関弁連所属会員との間で、様々な司法問題に関する意見交換をする場であり、十県会が順繰りに担当している。夏の地区別懇談会では、司法支援センターの発足をにらみ、同センターの準備にかかる様々な問題、とりわけ刑事弁護人の選任に関する弁護士会の関わり方等が議論され、日弁連執行部との間で激しい議論の応酬がなされた。冬の地区別懇談会では開始された公判前争点整理手続きの実施状況の交流や、ゲートキーパー問題の運動をめぐる率直な意見が飛び交った。なかなか会員が直接日弁連に意見を伝える機会がない中で、この懇談会は貴重であると感じた。

(2)  法曹連絡協議会

東京高裁、東京地家裁、東京高検、東京地検と関弁連管内の理事者との間での意見交換会が行われた。今年度は裁判員裁判発足を前提とした裁判所庁舎の対応、被告人の処遇について、また新制度である年金分割審判の運用等の意見交換が行われた。司法支援センターや裁判員裁判についてはいろいろな場所で頻繁に意見交換がなされているが、焦眉の課題以外について意外と利用者の目で問題点を指摘する場は少ないように思う。東京高裁管内全体を見渡して、些細なことでも互いに確認し合えるこの場は、国民により利用しやすい司法を目指すためには大変貴重であると感じた。

(3)  小規模支部交流会

まったく始めての試みであった。関弁連管内の小規模支部(裁判所支部、弁護士数の少ないところ)の実状を出し合い交流をした。持ち込まれる事件の多寡、事件の色合い、財政的基盤の強弱など、支部によって実状はまったく違うということは、ある程度予想していたこととはいえ驚きだった。当番弁護や国選など、少ない会員でも地域的に分担をしたり、時には助っ人を送り合ったりと、合理的に工夫して対応している。同じ関弁連管内でも、マンモス弁護士会の傍ら、小さな支部で頑張っている会員のみなさんには、頭が下がった。

(4) シンポジウム「司法における男女共同参画 〜 その条件づくり」

これも始めて取り上げたテーマである。司法において男女共同参画は進んでいるのか、法律事務所、弁護士、司法修習生、ロースクール生への詳細なアンケートの実施、集計および法務省、裁判所へのインタビューにより、司法全体の女性の進出状況について相当程度実態が浮き彫りになった。パネルデイスカッションなどを通して、スウェーデンと日本の違い、内閣府の積極的な取り組み、女性弁護士も積極果敢に業務領域を広げていくことの重要性、ジェンダーにおける女性弁護士の役割など、様々な視点から問題をとらえることができた。これから法曹を志すと思われる若い人も多数参加しており、法曹界の実態を垣間見ることができたのではないか。


第5 会計報告

1 一般会計 


 

 

 

2    特別会計

        省略


選挙特別会計決算

省略


3 選挙特別会計期別収入決算

省略


第6 期成会2006年度活動方針(案)

 

1 日弁連、東弁の課題

弁護士会が今日抱える課題は、第1に、司法制度改革で制度化された諸制度を弁護士全員が支えるという意識の覚醒である。それとともに、担い手として優秀な人材を輩出し、制度の円滑なスタートと発展的な運営をしていかなければならない。当面は、2006年10月から活動を開始する日本司法支援センター、そして裁判員制度へ向けた準備が重要である。既にスタートを切っている法科大学院の法曹養成のサポートの継続、弁護士任官、非常勤裁判官の引き続く輩出、など、弁護士の担うことは多い。一旦出来た制度は、担い手を継続して輩出し続ける必要がある。今年度は、担い手を永続的に輩出するための体制作りと、会員の意識改革に取り組みたい。

第2に、憲法改正問題、国民投票法案、ゲートキーパー問題、貸金業規制問題、共謀罪、代用監獄、少年法、刑事司法への対応、など、各種立法問題で、政策決定、決断、運動が要求される。これらに弁護士会が適切に対応するよう、情報収集と監視と意見表明を迅速適切に行わなければならない。

第3に、若手を中心に急速に増加する弁護士の問題がある。弁護士会はどう対処すべきか、早急に議論し、展望をもつ必要がある。

以上のうち、東弁期成会が担うべき課題は何か、どのようなスタンスで臨むか、この辺を皆で議論して見定めつつ活動したい。この1年も緊張の連続となることが予想される。

情報を迅速に流して共有し、共通の基盤で実りある議論をし、決定し実行する期成会にしよう。

 

2 各種課題と活動

実務的課題は、出来るだけ執行部会に委ね、毎月1回開催する幹事会では、会務運営上の重要課題に加え、上記諸課題を議論する。

また、日常的には、別紙各委員会活動を活発に行う(詳細は、別紙各委員会報告と活動方針を参照、新課題に対応する委員会を新設する)。そして、毎月の活動報告を期成会MLなどで流す。こうして、500名余の会員が常時情報を共有する。

そして、活動は、「楽しく、明るく、元気よく」やりましょう。

 

3 50周年記念事業準備会の発足

・    期成会は今や東弁会員の9分の1で構成する組織

・    東弁における位置、働き、日弁連全体における位置、働き

・    設立趣意と現在の活動の異同。今日的存在意義、アイデンティティー(何を旗印にしてこの会に結集するのか。東弁の人事の公正・運営の民主化と選挙運動の粛正目的では今の若手に理解不能、違和感。新しい正義と人権の担い手集団を正面から打ち出すべきではないか。)

・    500をこえる組織にふさわしい規約の検討

・    50年余にわたる年齢構成

・    全期会(15年未満)の弁護士会レベルの横の連絡や活動に対応できていない。

・    各種担い手輩出要求への対応が可能か(一本釣り人事でどこまでやれるのか)。

など、期成会の現状認識を総括し、会の規約の改正も含めて議論する事業は、創立50周年事業(1959〜2009年)の一環として行うこととして、今年度中に50周年記念事業準備会を発足させる。