期 成 会 創 立 趣 意 書


 弁護士は国民の基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とし、その団体である弁護士会は、裁判所、検察庁と併立して民主主義司法運営の一翼を担う権威ある機関でなければならない。然るに全国最大を誇るわが東京弁護士会の実情は親睦を名とする選挙母体である親和・法友の二大会派によって唾棄すべき選挙抗争が繰返され、各種委員、破産管財人等の人事は選挙の論功もしくはボス的派閥機構によって行われ、これがため会の運営は非民主的となり、対外的にも無能力の状態に陥り、内外にその信を失墜しつつあることは幾多の事例によって明らかなところであります。
 われわれは、かような弁護士会の腐敗した現状を黙視することができない。累積された因襲と悪弊は、われわれの手によって除去しなければならない。
  われわれは、清新の気概を失わぬ司法修習生出身弁護士を中心とする強固な団結を育成し、年々輩出する優秀な新進を迎え入れて実力を涵養し、弁護士会の運営をろう断している二会派を批判し、その反省を求めるとともに、さらに積極的に弁護士会の体質を改善し、名実共に誇りうる東京弁護士会を実現し、弁護士法の明記する理想を達成しなければならないものと確信し且つ自負するものである。

 われわれは以上の趣旨によってここに全期有志団体期成会(仮称)を結成し、創立総会において総意により、討議決定せられる規約に基き、真に明朗にして建設的な団体を創始しようとするものであります。
  なお、法友・親和の二会派は、戦後理事者選挙のための選挙母体として、親睦団体である既成小会派が連合して成立したものでありますが、修習生出身弁護士の大半は、入会早々会の実情に通ぜず、弁護士会の在るべき姿に想到しえない時期に、漫然とこれらの既成会派に所属し、主義も理想もない選挙戦の濁流に投ぜられているのであります。われわれは、一期から十一期に至る修習生出身弁護士諸兄が、既成会派の中から東弁改革の発言と行動を起こされることを期待し、他方東弁全期会を結成して東弁民主化への努力を重ねてきたのでありますが、かような方法では最早限界に到達したものと判断せざるを得ない情況であります。然し修習生出身会員は既に四百名に達し、毎年四十名を越える気鋭の士が入会しつつあり、この際志を同じくする者が、明確な目的を有する団体を結成し、これら有為の新進を迎え入れる中核とならなければ、東弁浄化の機会は永久に失われるものと言っても過言でないと思います。従って既に会派に所属する諸兄も、以上の趣旨を十分御理解のうえ、入会当時の理想と抱負を再びここに新たにして、強力な団体結成のため、多数参加せられるよう希望する次第であります。

昭和三十四年十一月

期 成 会 発 起 人 会