2002年度定時総会(2003年3月26日)議案目次
2002年度期成会活動報告 …… 2
2003年度期成会活動方針 …… 9
2002年度決算・2003年度予算 ……14
弁護士会将来構想委員会の活動報告 ……21
企画委員会の活動報告 ……24
業務改革委員会の活動報告 ……27
ホームページ委員会の活動報告 ……28
人事委員会の活動報告 ……29
広報委員会の活動報告 ……30
弁護士任官推進本部の活動報告 ……31
基本政策プロジェクトチームの活動報告 ……32
敗訴者負担制度プロジェクトチームの活動報告 ……36
有事法制プロジェクトチームの活動報告 ……37
憲法改正問題プロジェクトチームの活動報告 ……39
2002年度日弁連理事者会の総括的報告 ……42
2002年度関弁連理事者会の総括的報告 ……45
2002年度期成会活動報告
第1、弁護士会の動き
1、はじめに
今回の司法改革論議は@私たちが長年主張してきた「市民の司法」への抜本的改革を求める動きとA経済界が主導する国際的グローバル化・規制緩和政策の一環として使い勝手のよい司法に変えようとする動きB最高裁官僚主導の司法を維持しようとする動きが、せめぎあいながら進められて来ており、いわば三者の総力戦となっている。
2002年1月以降、審議会意見書に基づく司法改革推進本部検討会での審議が月1〜2回のペースで進められているが、その審議は事務局主導の下、同年3月19日に閣議決定された「推進計画」に則って大変なスピードで進められている。総力戦のなかで、「市民の司法」実現へ向けての改革の課題を実現するのは容易なことではない。
それでも検討会開始当初、半数あった議事録の発言者を非顕名とする取り扱いが、全て顕名とする扱いに是正されるなど市民の運動の成果も現れている。
以下、今年度の弁護士会における司法改革への取り組みのうち大きな運動を伴ったものや会内論議の的になったもの、および、日弁連を挙げて取り組んだ有事法制問題について振り返ってみる。
2、弁護士費用敗訴者負担制度問題への取り組み
この問題は2002年6月27日の司法アクセス検討会で審議開始されて以来急ピッチで審議が進められている。
日弁連は、9月20日,弁護士報酬の一般的敗訴者負担制度に反対する取り組みを強めるため「弁護士費用敗訴者負担問題対策本部」を設置し(事務局長斉藤義房会員)、精力的な活動を開始した。まず10月11日の日弁連人権擁護大会では導入反対の決議を行い、さらに11月22日には、クレオにて東京大気汚染訴訟原告、ハンセン病訴訟原告らを招いて「弁護士報酬の敗訴者負担に反対する集い」を行って800名もの参加者を集めるなど、旺盛な活動に取り組んだ。
現在は100万人の導入反対署名と意見広告カンパに取り組んでいる。署名は、2003年3月18日時点で全国では437,368名分集まっているが、東弁では17、847名分しか集まっていない。格段の取り組みが求められる。 他方意見広告カンパは,やはり2003年3月17日時点で全国で1297件21,105,000円,その内東弁分が171件3,250,000円となっている。引き続き取り組みが求められる。
3、綱紀審査会問題への取り組み
2002年2月の日弁連臨時総会では、「綱紀審査会を会則上の機関とし、その決議には拘束力を持たせない制度とする」旨の決議が行われていたにもかかわらず、6月18日の法曹制度検討会の議論が、綱紀審査会を弁護士法上の組織とし、その審査会の議決に拘束力を持たせる、との方向で取りまとめられてしまった。これを受けて、12月5日の日弁連臨時総会において「綱紀審査会を弁護士法上の機関とする」「出席委員の3分の2以上の多数による審査会の議決に拘束力を持たせる」旨の決議を行うこととなった。
この問題は弁護士自治とも絡む重大問題であっただけに,期成会内外で大きな論議を巻き起こしていた。しかし綱紀審査会の設置によって懲戒委員会の外部委員過半数化論や懲戒請求人に対する出訴権付与論を解消させることが出来た点を評価する立場から、この決議は圧倒的多数の弁護士の賛同を得て可決されることとなった。
4、裁判員制度問題への取り組み
2002年6月11日の裁判員制度・刑事検討会において、裁判官と裁判員の員数比率を職業裁判官3名、裁判員2名とするコンパクト論が提起されるに及んで、裁判員制度の形骸化を防止するためには、裁判員は裁判官の3倍程度は必要であるといった批判が加えられ、直接主義・口頭主義の徹底、被告人の権利保障の必要性なども訴えられるようになった。
日弁連は10月17日の福岡から同月27日の高松まで全国の高裁所在地8ヶ所において、どのような裁判員制度にすべきか、市民を対象にした民間公聴会を開催し、東京でも同月20日に民間公聴会を開催した。
これと平行して全国各地の単位会では「模擬裁判員裁判」を開催しており、裁判員経験者の意見や傍聴者のアンケート結果など貴重な資料が蓄積されつつある。
5、弁護士任官問題への取り組み
2001年12月に日弁連と最高裁との間で成立した「弁護士任官の推進のためのとりまとめ」をふまえ、全国のブロック・弁護士会において任官推進の組織が立ち上がった。その結果,この1年に期成会の会員を含め32名もの任官候補者を確保するに至った。
東弁では、既に任官推進のための東京パブリック法律事務所(所長は石田武臣会員)を開設し、更に刑事事件対応型の第2公設事務所を足立区に開設する話が具体化しつつある。
6、有事法制問題への取り組み
政府は2002年4月17日衆議院に有事法制3法案を上程した。
日弁連は国会上程に先立つ同年3月15日、上程に反対する理事会決議をあげた。法案の中身が明らかになるや4月20日、その内容に反対し廃案を求める旨の理事会決議をあげ、5月9日には有事法制問題対策本部を設置し、さらに6月21日の理事会では「有事法制3法案についての意見書」を採択した。また10月11日の人権擁護大会でも有事法制3法案の廃案を求める旨の決議を圧倒的多数の賛成で採択した。
そして10月23日には、日弁連会長を先頭に日弁連始まって以来ともいうべき約1000名の弁護士による日弁連国会請願パレードを成功させた。
東弁でも5月10日に有事法制3法案に反対する会長声明を発表するや、直ちに「有事法制問題対策協議会」を立ち上げ、同法案廃案へ向けて運動を進めてきた。
第2、期成会のこの1年の活動
1、はじめに
前年度以来、期成会では司法改革を巡って会内で熱い議論を続けていた。そのような議論の中で、会内から「期成会は、何時そのような方針を決めたのか」「そのような話は聞いてない」(日弁連会長選挙を巡っての2002年1月18日と臨時総会及び同月28日のその続会での発言)いった発言も出ていた。
2002年度執行部は、その発足当初より、会員の総意に基づいて2003年度東弁会長に期成会員の擁立をめざしていた。そのため政策活動の強化と会内合意形成を最大の眼目として活動を行ってきた。以下この1年の活動の跡を振り返ってみる。
2、各種集会や総会などへの取り組み
(1)司法改革会員討論集会
2002年6月1日には、午後1時から6時まで会員29名の参加を得て、「司法改革会員討論集会」を持った。
ここでは@司法審意見書をどう評価するかAどのような運動を進めるべきか、などを巡って熱心な討論が重ねられた。司法審意見書は不十分なものではあるが日弁連運動の一つの到達点と評価する立場からは、市民の中に入っていって司法改革運動をもっと作り上げていくべきであると主張され、司法審意見書は財界の規制緩和要求に基づいて出されたものであると否定的にみる立場からは、司法改革に対する抵抗運動ないし仕切り直しをすべきだと主張された。
このように総論について会員間に厳しい意見対立が見られたものの、各論的課題では一致した行動をとれる部分も多い筈であるとの発言を受けて、出来るだけ一致した行動を追及することが確認された。
(2)弁護士自治についての緊急討論集会
同年7月22日にも、午後6時30分から8時30分まで会員25名の参加を得て、「弁護士自治の視点から弁護士制度改革をどうみるか」と題し、弁護士自治についての緊急討論集会を持った。
この集会は、法曹制度検討会において綱紀審査会の議決に拘束力をもたせるとの意見が多数を占めたことを契機に、6月27日、日弁連会長が然るべき時期に日弁連総会にて拘束力付与の承認を得たいとの姿勢を示したことを踏まえ、持たれたものであった。
弁護士自治の根拠を「市民の支持と理解」に置くとする立場からは、市民の信頼を強固にするために公益活動を重視する必要があるし、懲戒問題などについては市民に説明責任を負うと主張された。
他方、「市民の支持と理解」を弁護士自治に対する攻撃の仕掛けと捉える立場からは、公益性論は権力との対決あるいは人権救済の視点を欠落しているし、拘束力を付与することは弁護士自治の侵害であると主張された。つまり日弁連会長の姿勢を支持するか否かの考え方の違いは、その根底に「市民の支持と理解」と「弁護士の職務の公共性」についての理解の食い違いがあることが明らかにされた。
(3)夏合宿
2002年8月18日から19日にかけての軽井沢ホテル「音羽の森」での夏合宿の第1日目にも「司法改革」についての討議を行った。
ここでは、期成会から東弁会長を擁立すべくその基本政策作りを行っていた基本政策プロジェクトチームからの、財界の考える司法改革に反対しつつも市民の利益に合致する司法改革を実現すべきであるとの問題提起を受けて、再度「司法改革」を巡って熱い討議が行われた。
先の第1回目の討論集会で「各論的課題では一致した行動をとれる部分も多い筈である」と確認されていたことを受けて、「法科大学院問題」「裁判員制度」「弁護士報酬敗訴者負担制度」など各論的課題をじっくり討議しようと考えた。それと同時に先の2回討論集会で、弁護士自治を巡っては「市民の支持と理解」と「弁護士の職務の公共性」についての理解の差に日弁連執行部支持派と批判派の考え方の分岐点があることが分かっていたので、それらの点についてより踏み込んだ討論を重ねたい、このような討議を重ねることによって相互理解をより深められる、とも考えていた。
しかしながら討議は、日弁連執行部批判派による司法審意見書批判と日弁連執行部批判を軸に進められた。この討議の場で提起された問題は、その殆どが第1回目の討論集会で既に提起済みのものであった。しかも、その討議内容については参加者から「論争を聞いていると形而上学的な神学論争をやっているように思われる」との指摘を受けてしまった。残念ながら日弁連執行部支持派と批判派との相互理解の努力は実らなかった。
(4)11月5日の期成会臨時総会
2002年5月の発足以来、基本政策プロジェクトチームが東弁会長選挙をにらんで期成会基本政策の策定のための討議を積み重ねていた。同チームでは中本源太郎会員にも参加を求めるなど、出来るだけ多くの会員の声を採り入れようと試みた。しかしながら同プロジェクトチーム案(執行部案)に対して、中本会員を中心に有志案を策定するとの動きが明らかになった。通常であれば基本政策の決議と東弁会長候補者の決定は同時に行われるものであろうが、このような動きを受けて、11月5日、延べ100名以上の会員の参加を得て、どちらの案を期成会の基本政策とするのかの点に議題を絞った臨時総会を持った。
この臨時総会では、既に3回にわたる討議の場で明らかにされていた@司法審意見書をどう評価するのかA司法改革についての日弁連の活動をどう評価するかB今後とるべき運動の方向、の3点を中心に討議が進められた。ここでの討議内容は、殆どこれまでの討議で繰り返し提起された主張とオーバーラップするものであった。何とか期成会内の議論が二分されるのを避けたいとする会員から、両案のすり合わせが出来ないかとの問題提起がなされたが、執行部はこれ迄の再三にわたる討論の経過からしてこれ以上のすり合わせは困難と判断して、両案の採決を求めた。採決の結果は以下の通りであり、「執行部案」を期成会の基本政策とすることが決定された。
「執行部案」賛成78名
「有志案」 賛成 8名
留保 6名
(5)11月11日の拡大幹事会
12月5日の日弁連臨時総会において綱紀審査会への拘束力付与と修習期間短縮問題が議案として予定されていたため、この問題について会内討議の機会を持つべく25名の会員を集めて開催された。
綱紀審査会への拘束力付与問題については、2月の臨時総会決議の明らかな後退ではないか、期成会では屋上屋論を主張していたではないか、等と主張して拘束力付与に反対する意見もあった。しかし、2月時点では見えなかった制度の青写真が見えてきた時点で反対をすれば市民から見放されてしまう、もはや屋上屋論で反対する段階ではない、等とする意見が多数を占め、採決をとったところ賛成は14名、反対は2名であった。
また修習期間短縮問題については、法科大学院構想自体に反対する立場からの反対論はあったものの、止むを得ない措置として是認する意見が多く、採決をとったところ賛成は13名、反対は2名であった。
(6)12月2日の期成会臨時総会
2003年度基本政策を決定した11月5日の臨時総会を受け、64名の会員参加の下、東弁会長候補者決定問題を中心とした討議を行った。執行部より日弁連筆頭副会長となる東弁会長には、市民の司法実現のためにリーダーシップをとれる人として田中敏夫会員(20期)を推薦するとの提案を行った。高木國雄会員による「田中会員は1995年度の東弁副会長をはじめ会務に尽力してきた人であり、弁護士会を切り回せる力がある」等との推薦の弁を受けて、田中会員より「当選の暁には、会員の叡智の結集の上に立って、弱者のための司法、人権の司法を目指して活動していきたい」との決意表明があった。
田中候補以外の立候補者がいなかったため、同候補を東弁会長候補とすることの可否決定のための採決を行い、圧倒的多数(反対2名)の賛成によって田中候補の東弁会長候補擁立が決定された。
3、各期会開催へ向けた取り組み
一人でも多くの会員の意見を期成会の基本政策に反映させるべく、2002年7月1日の53期、54期会員との各期会を皮切りに同年11月28日の45期、47期、48期会員との各期会まで7回にわたって、14期から29期までを除く全ての期の会員と執行部との間で意見交換会を持った。ここでは、折から基本政策プロジェクトチームで討議が重ねられつつあった期成会基本政策(案)を示して各会員の意見を聞いただけでなく、「期成会ニュースを読み易くして欲しい」「ホームページは更新が命だからきちんと更新して欲しい」といった改善提案から、「何とか期成会が割れないように努力して欲しい」といった司法改革を巡る会内意見対立処理に至るまで、広範な問題について意見交換を行った。
執行部の意気込みほど各期会への参加者が多かったわけではなかったが、会内合意形成のためのささやかな取り組みとして理解されたい。
4、ホームページの活用
ホームページの会員交流ルームも会内合意形成の一助になることが期待された。しかし残念ながら若い期の会員を除いてアクセスする会員が多いとはいえない現状にある。パソコンに強い若手会員を大幅に増強してなお一層の活用を図るべきである。
5、政策活動の強化
期成会では、2002年4月26日、有事法制プロジェクトチームを発足させたのを皮切りに、同年5月には2003年度東弁会長選挙に候補者を擁立することを前提に基本政策プロジェクトチームを発足させた。基本政策プロジェクトチーム(座長高木国雄会員)は発足から約半年にわたって延べ20回以上の討議を重ねて、期成会の2003年度基本政策「21世紀の新しい司法をめざして」を完成させ、全ての東弁会員に配布した。この基本政策を策定するに当たっては、一時チームメンバーに中本源太郎会員の参加を求めたり、各期会から意見を聴取するなど、一人でも多くの会員の意見を汲み上げる努力を積み重ねた。
さらに同年9月には敗訴者負担プロジェクトチームを結成して敗訴者負担のもたらす弊害事例の収集をしたり、東弁憲法問題協議会に参加している会員を中心に憲法問題プロジェクトチームを結成してアメリカのイラク攻撃阻止へ向けての声明を発表するなど、旺盛な政策活動を展開した。これらプロジェクトチームの活動の詳細は、各プロジェクトチーム座長の報告に委ねる。
2003年度 期成会活動方針(案)
T 2003年度期成会活動の重要な意義
2003年度の期成会活動は次の二つの極めて重要な課題を持っている。
@激戦の東弁会長選挙で勝利した田中敏夫会長を期成会が責任をもって支えていかなければならない。
A正念場を迎えている司法改革の動きの中で「市民の司法」の実現をめざして全力で取り組まなければならない。
この二つの課題は密接不可分である。
少数会派である期成会の擁立した田中候補が大会派の有力候補を破って勝利を勝ち取ったのは、人格識見に優れ活動実績のある田中候補が現時の会長により相応しいとの評価をされたというだけでなく、期成会の掲げた司法改革に関する基本政策が多数の東弁会員から支持されたとみることができる。基本政策は単なる目標を掲げたものではなく、東弁会員に対する期成会としての責任ある選挙公約というべきものであるから、東弁田中執行部のもとで基本政策にうたう司法改革を実現するために、期成会としても組織を挙げて全力を傾注していかなければならないのは当然である。
いま司法改革の諸課題については、司法制度改革推進本部の検討会において立法化に向けての制度設計に関する議論が重ねられているが、すでに部分的には国会における立法化の段階に入っているところもある。しかし、司法改革をとりまく情勢は厳しいものがあり、課題によっては弁護士会のめざす司法改革の方向が大きく捻じ曲げられる危険性も多分にある。
2003年度はまさに司法改革の帰趨を決めることにもなる重要な節目の年である。諸課題についての具体的な制度設計の提起を踏まえて、検討会対策、国会対策、世論対策等に最大限の取り組みをしなければならない。そうでなければ悔いを千載に残すことになろう。
期成会として前記の二つの課題をどこまで成し遂げることができるか。2003年度の活動を通じて、まさに政策団体としての期成会の真価が問われることになる。
U 東弁田中執行部を支えるための活動
1 政策活動の強化
司法改革をめぐる臨戦体制のもとで、弁護士会は、さまざまな課題について短期間に制度設計上の問題提起や適切な対応を求められる機会が増大する。そのような課題の多くは弁護士会の関連委員会等の場で検討することになろうが、その際できる限り一般会員の意見を反映させ、その重要性に応じて総会での会内合意を図ることが必要となる。
かかる事態に備えて、期成会として常日頃から司法改革をめぐる重要課題の政策について議論を深めていかなければならない。期成会としての政策活動をさらに強化して田中会長を支えることが必要不可欠な課題となるのである。そのためには、執行部として、従来の基本政策プロジェクトチームに代わる恒常的な政策検討体制を整え、時々刻々に変化する情勢に対応して政策討議が行えるようにする必要がある。また、情勢に応じて、重要政策課題毎にプロジェクトチームを設置して適任者(先輩会員・若手会員にも積極的参加を要請)によるチームを構成し、そのチームでの検討結果を意見書にとりまとめて、幹事会や会員集会等で検討したうえ、期成会意見書として発表することも必要である。
さらに、東弁の会務運営上の問題に関しても、期成会が率先して提起すべき課題の政策提言(例えば、役員選挙の運用があまりにも選挙活動を制約する方向で動いている問題についての改善策など)も行う必要がある。
2 委員会活動その他公益活動への参加
多数の期成会会員が弁護士会への会務に積極的に参加することが求められている。
一つは、弁護士会の各種委員会の委員として恒常的に活動に参加することである。従来から期成会の会員は人権関係の委員会には積極的に参加してきたが、弁護士業務対策等の業務関連の委員会に参加する者はごく少数であった。しかし、弁護士業務関連の課題は弁護士制度改革を進めるうえでも今後ますます重要になってきている。弁護士会の各種委員会はいずれも弁護士会の会務推進のうえで必要なものであるから、期成会会員が原則としてどの委員会にも参加し、活躍することが必要である。
もう一つは、国選弁護事件、当番弁護士、クレサラ法律相談、法律扶助協会法律相談等のいわゆる公益活動に積極的に関わることである。期成会会員はこれらの活動にも積極的に関わっている者が比較的多いといえるが、これらの活動の社会的な意義を考えればさらに期成会会員の総点検が必要である。
3 弁護士会行事への参加
弁護士会の活動はその影響力に応じてますます多方面にわたり拡大している。総会をはじめとして、会員集会、各種シンポや集会、国会要請活動、ビラ撒き宣伝活動、新年式、運動会、その他の行事等、一般会員の積極的参加が求められる行事は極めて多い。とりわけ2003年度は田中執行部を支えるという観点からも積極的参加が必要となる。この点でも、期成会の組織力・行動力がこの1年ほど試される時はないといえよう。
V 期成会の組織強化と活性化
1 中堅・若手の参加
田中会長の誕生を機に、期成会も飛躍しなければならない。期成会の組織をさらに強化し、活動を一層活性化することが必要である。
そのためには、中堅・若手会員の期成会活動への積極的参加と新人会員の拡大を図ることが必要不可欠である。
弁護士会活動や期成会活動への中堅・若手会員の参加が減少している。これは期成会に限らず、東弁の全体的な傾向であるが、弁護士自治や弁護士会の将来にとって由々しき問題である。なぜ中堅・若手会員の参加が少ないのか。中堅・若手会員の意見を十分聞きながら、その原因を明らかにし、的確な対応策を立てる必要がある。
2003年度の東弁副会長には、期成会から増岡研介副会長(41期)が、法友会から高岡信男副会長(40期)が加わる。弁護士会の運営に中堅・若手の風を吹き込む意義はきわめて大きい。この好機を最大限に活用して、期成会としても中堅・若手会員が積極的に期成会活動に参加するようにするための対策を講じなければならない。
2 情報伝達・会内合意活動の強化
期成会執行部から会員に対する的確で迅速な情報伝達を心掛ける。会員に対しては、機関誌紙を活用するのはもちろん、FネットのFax、ホームページ、メール、手紙、電話等の各種媒体を利用して、必要な政策情報の伝達と会員からの意見集約に努める。メーリングリストによる会員の意見交換の機会も設ける。
必要に応じて、拡大幹事会、会員集会、臨時総会等を随時開催するなどして、政策課題について論議が深まるように努力する。
期成会会員の中にも多様な意見や少数意見が存在しているため、これに十分配慮し、会内合意形成のあり方を検討する。重要な政策課題について会員の意見を広く集約して、会員の討論を積み重ねて、期成会としての合意形成を図るとともに、様々な機会を通じて期成会の存在意義・アイデンティティを追求する。
3 期成会組織の強化と活性化
(1) 執行部会・幹事会の活性化
執行部会・幹事会では最大限の出席を確保する。執行部会・幹事会では毎回必要な政策課題を集中的に議論できるように努力する。執行部会では、何が現在の重要な政策課題であるか、期成会としてそれにどう取り組むかを十分に検討する。幹事会では毎回「政策課題」の検討を行うこととし、必要に応じて外部からもその課題に詳しい人を呼んでともに討論する。特に重要課題については必要に応じて会員集会や臨時総会を開催する。
(2) 常議員団の活性化
常議員は、東弁の政策課題を真っ先に検討し意見を述べる立場にいるので、常議員団と執行部、幹事会は密接な連携を図る必要がある。
そのため、常議員団団長と同事務局長は執行部のメンバーとして執行部会に出席し、その他の常議員は全員が幹事会のメンバーとして幹事会に必ず出席することとするなど、幹事会・執行部会と常議員団が合同で政策検討を行う体制を確立する。
(3) 期成会内各種委員会の活性化
期成会内各種委員会は、期成会活動の活性化にとっては極めて重要な役割を果している。しかし、委員会によっては活動の体制が十分確立していないところもあり、また、委員長の執行部会への出席が芳しくなく、委員会と執行部との連携が不十分という問題もあったので、2003年度はこの点を克服して、委員会の体制と活動を充実させる。とくに、若手会員に委員会への参加を働きかける。
2003年度も、次の委員会等の活動を推進するとともに、情勢の必要に応じて新たなチームも設置する。
@ 企画委員会
A 広報委員会
B 人事委員会
C 業務対策委員会
D ホームページ委員会
E 選挙政策委員会
F 東弁将来構想委員会
G 弁護士任官推進本部
H 有事法制プロジェクトチーム
I 憲法改正問題プロジェクトチーム
J 弁護士報酬敗訴者負担制度チーム
(4) 執行部事務局体制の強化
執行部事務局(期成会三役と事務局次長)は、期成会組織強化と活性化の要の役割を果さなければならない。とりわけ田中執行部からの各種行事等への参加要請に対しては、直接的には執行部事務局が期成会側の受け皿となる。この事務局体制を強化する上でとくに重要なのは事務局次長の活躍である。事務局次長の増員及び若手からの起用も含め、さらなる事務局体制の強化を図る必要がある。
弁護士会将来構想委員会の活動報告
委員長 前 田 茂
1 当委員会の委員長は酒井幸会員であったが、同会員が2002年5月から日弁連事務次長に就任したため、前田茂会員が委員長を引き継いだ。
委員は、金子光邦、吉羽真治、中村雅人、石井藤次郎、犀川治の各会員で、その他必要に応じて最近の副会長経験者に出席いただいた。
2 当委員会は、2001年10月14日、それまでの議論をまとめて「東京弁護士会の将来構想に関する中間報告」を発表し、法友会、法曹親和会と3回の意見交換をおこなった。そこでは、各会派とも共通の問題意識を有していることが確認され、翌2002年4月9日、「法友会・親和会・期成会有志による弁護士会将来構想懇談会 世話人浜口臣邦 同二宮忠 同朝倉正幸」名で東弁会長宛建議書を提出した。
建議書は、「弁護士会の活性化の1方策として、会員弁護士の公益活動の義務化を実効化し、併せて会員間の負担の公平をはかる見地から、会員の公益活動についてポイント制度を導入することを検討する。」として、ポイント制度の目的、制度設計のあり方、制度の試案を示すものであった。
3 当委員会では、今年度、こうした経過を踏まえ、ポイントシステムの具体的な提言をまとめる作業をおこなった。
今年度理事者は、先の建議書を積極的に受けとめ、調査室への調査嘱託、韓国弁護士会の調査をおこなうなどして、ポイント制度を確立すべく、2002年10月、各委員会に「『会員の公益活動等に関する会規』で会務を義務化することの可否及び義務化を確保する方策等について」諮問し、会員集会をおこなった。その上で、2003年2月28日の臨時総会に公益活動への参加義務を課することなどを内容とする「公益活動等に関する会規一部改正案」を上程した。
しかし採決時の出席人数が少なかったため、理事者が事案の重要性に鑑み議案を撤回したため、採決されず次年度に持ち越されることになった。
4 委員会では、今期、ポイント制度の具体案について議論し、添付資料のとおり、ポイント制度の設計案を整理した。
期成会が提起したことにより、この問題が議論され、今年度理事者の積極的取組みにより、わずか1年で総会に上程されるまでいたった。
前記のとおり、公益活動の義務化、ポイント制度、賦課金等については新年度の田中執行部により再度検討されることになった。
期成会は、この制度実現のための2重の責任を負っているともいえるので、引き続き必要な活動をおこなっていく必要がある。
(総会資料)
将来構想委員会のポイント制度設計案
1 ポイント制度の目的
(略)
2 ポイント制度の概要
免除会員を除く会員は、毎年、弁護士会活動(日弁連、関弁連、東弁、法律扶助協会(本部・東京支部)、東京都弁護士協同組合)、国選弁護・当番弁護(少年付添)、扶助事件等の活動(会務活動等という)に参加し、所定の点数を獲得しなければならない。
会員は毎年5点以上のポイントを獲得しなければならない。
配点数は以下のとおりとする。
東弁総会に出席した場合 2点
東弁常議員会に皆勤または精勤した場合 3点
東弁常議員会に2分の1以上出席した場合 2点
弁護士会の委員会に皆勤または精勤した場合 2点
弁護士会の委員会に2分の1以上出席した場合 1点
国選弁護・当番弁護(少年付添)、扶助事件を受任した場合 2点
当番弁護士として接見出動し受任に至らなかった場合 1点
日弁連総会、関弁連総会(定時・臨時)に出席した場合 1点
各会員は、毎年5月末日までに、会務活動等報告書を提出しなければならない。会員が期限までに申告しない場合、獲得点数がなかったものとみなす。
5点未満のポイントであった場合、不足3点まで翌年度に持ち越すことができる。
5点未満のポイントであった場合において、翌年度への持ち越しをしない(できない)場合、不足1点につき1万円を寄付金として会に納付しなければならない(納付期限7月末日)。
3 免除会員
@ 弁護士会等役員(日弁連、関弁連、東弁、法律扶助協会(本部・東京支部)、東京都弁護士協同組合、財団法人法務研究財団・・以下、同様)
弁護士会嘱託、
司法研修所教官
国会議員、地方公共団体議員、その他当会が認める公職にある会員
大学(法科大学院)(助)教授等教職活動に従事している会員
4月1日現在満65歳に達している会員
病気、留学等により弁護士業務をおこなっていない会員、または、会務活動等をおこなうことが困難であるとして当会が承認した会員
任意団体(法律家団体・非営利活動団体)の役員に就任しているため、会務活動等をおこなうことが困難であるとして当会が承認した会員
その他、特別の活動により会務活動等をおこなうことが困難であるとして当会が承認した会員(例えば、オウム弁護団)
企画委員会の活動報告
委員長 濱 田 広 道
1.2002年度活動報告
(1) 委員
委員長 濱田広道 副委員長 片山哲章
委 員 藤井眞人,中村忠史,石井麦生,上石奈緒,張學錬,伊藤勝彦,田部知江子,三森敏明
(新任)長尾詩子
(2) 内容
@
ワイン企画(3月18日)24名参加
A
弁護実務連続講演会
・第1回(3月21日)
テーマ:個人再生手続受任 改正商法 8名参加
・第2回(4月16日)
テーマ:消費者契約法,少年事件受任心得 3名参加
・第3回(5月28日)
テーマ:DV,ストーカー 成年後見 7名参加
B刑事弁護研究会
数回の会合を開き,無罪事例や保釈事例の報告及び覚醒剤鑑定会の準備等を行った。毎回10名前後の参加。
覚せい剤鑑定講演会(11月27日)
外部から講師を招き,他会派にも参加を呼びかけた。
30名参加 出版を予定
C14期,15期40周年記念祝賀会(6月28日)
出席者52名(一般出席者は41名)
Dボーリング大会+暑気払い(7月12日)
新宿コパボウル 嵯峨野 15名参加
E三線ライブ(10月1日)
六本木「島唄パラダイス」 山本哲子会員の持ち込み企画
55名参加(他会派にも参加を呼びかけた)
F55期新人歓迎会(11月20日)
松本楼 新人11名,一般35名の参加
Gワイン企画(3月25日)
(3) 結果・反省点
@ 伊藤方一委員,金久保委員が退任し,新たに54期1名が委員となった。実働委員が減少している。
A 酒蔵見学は中止となった。
B 委員以外の会員からの持ち込み企画(三線ライブ)は大盛況であった。今後も広く企画を募ることとする。また,他会派に対する参加募集も企画を成立させるうえで重要であった。
C 本年度の弁護実務ないし業務に関する企画は不発に終わった。個人再生手続・改正商法の回が一番会員の関心を集めたようであったが,それでも参加は8名程度であった。ちなみに刑事弁護研究会の参加者も10名前後。覚せい剤講演会には多数が参加した。
2.2003年度活動方針
(1) 委員
委員長 濱田広道 副委員長 片山哲章
委 員 藤井眞人,石井麦生,中村忠史,上石奈緒,張學錬,田部知江子,三森敏明,伊藤勝彦,
長尾詩子
(2) 内容
@ 基本的には昨年度を踏襲しつつ新企画を加える。早めに年間計画を提案する。
5月 大相撲観戦
6月 40周年記念祝賀会(日程を決める必要がある。ただし,隔年開催にする場合は中止)
7月 ボーリング大会+暑気払い
8月 家族向け企画(後述)
9〜10月 ワイン会
11月 新人歓迎会(早めに日程を決める必要がある)
12月 忘年会
2月 酒蔵見学
A 上記企画のほかに,飲食系企画として,沖縄ブームが継続していることを見込んで三線ライブを再度開催するか,または,山本哲子会員発案の他のオリジナル企画を検討中。
B 家族向け企画(8月)としては以下の案がある。
ア ろくろ イ 蕎麦うち ウ ガラス吹き エ 渓流釣り
オ 屋形船
C 弁護実務の研鑽について
ア 刑事弁護研究会は,覚せい剤鑑定に関する講演を元に出版を実現する。また,講演第2弾(DNA鑑定)を開催する。
イ 弁護実務講演会。主に民事に関する5つのテーマを決めて2カ月に1回の割合で実施できれば理想的である。
D
実働委員の補強が必要
入会した新人には,とりあえず企画委員会ないし広報委員会に所属してもらい,会との関わりをもってもらうことが人材確保の見地からも有用。
E
予算について
参加しやすくするために、会費を抑えざるを得ない面がある。その分、期成会からの補助を必要とする。その金額を、年度ごとにあらかじめ決めていただきたい。
業務改革委員会の活動報告
委員長 山田裕祥
期成会HPに、会員の広場という掲示板(チャットルーム)を作っただけです。それ以外は何もやらないうちに1年たってしまった。1年ははやいものですね。私の構想は、
第1部 未来の弁護士業務
1 政治分野
政策の立案
不正・違法行為調査訴追案
2 財政分野
支出の不正・無駄の調査訴追案
税収その他適正収入の立案
3 外交分野
在外公館不正支出
ODAの不当不正
戦前戦後の日本外交のへまを分析、外交のあるべき姿を提案
4 法務分野
法律立案に積極関与問題点指摘公開
5 ビジネス分野
ベンチャー企業支援活動→会社設立の法律問題、会計、税務、特許その他につきトータルに支援する態勢作り
6 労働、公害、消費者分野
第2部 未来の弁護士の体力、人間性、趣味、倫理紀律
というもので、期成会ホームページの掲示板(チャットルーム)で、意見交換や投稿し合おうとしたが、何しろ大風呂敷のため、実現はしなかった。しかし期成会ホームページのチャットルームは立ち上がり、活況を呈し始めている。
ここで分野別に継続的に討論して行けるような仕組みを作るのが今後の課題である。
ホームページ委員会の活動報告
委員長 森 田 太 三
ホームページ委員会は、2002年度に正式に期成会のホームページを立ち上げた。迅速な情報の伝達を心掛けるよう努めたがなお不十分である。また、そういう弱点の故か、ホームページにアクセスする会員はまだ多くない。
ホームページ上で投稿を呼びかけたが期待した数にはならなかった。ホープページの活用の要点は、何よりも新鮮な情報を迅速に伝達することにある。
したがって、次期は、
@ 迅速な情報の伝達
A 会員へのアクセスの工夫(例えば、期成会に新しい情報が載ったときにメーリングリストで知らせるなど)
B
業務への貢献
などについて取り組みたい。
人事委員会活動報告
委員長 小 林 七 郎
2002年度の期成会の人事は、弁護士会役員等の面において躍進を遂げた。別稿で詳しく述べられているとおり、田中敏夫会員(20期)が東弁会長選挙に勝利したことは特記すべきことであるが、それにとどまらず副会長に増岡研介会員(41期)、監事に山本英司会員(34期)の就任が決定した。また、日弁連常務理事に脇田康司会員(25期)、関弁連常務理事に保田行雄会員(33期)、同理事に安部井上会員(40期)の就任が決定した。期成会が、日弁連、関弁連、東弁にこれだけ多くの役員を送り込めたことは歴史的なことと言ってよく、大きな躍進である。
司法研修所教官については、民事弁護教官として木村裕会員(33期)が決定し、期成会としては3人目の民事弁護教官を出すことができた。他方、刑事弁護教官については、適任者を候補に立てたにもかかわらず拒否された。ここに最高裁の姿勢が表れているが、今後も根気強く候補を立てていく必要がある。
更に、現時点では流動的ではあるものの、今年度中に期成会として最高裁判事候補を擁立することも検討されている。期成会出身の最高裁判事の誕生が実現するか否かはともかく、機会がある限りその可能性を追求することは我が国の司法の現状を打破していく上で意義があると考える。
最も基本的で重要な各種委員会の活動については、従来から指摘されてきた若手の結集が弱いというところに重点を置き、55期以降の会員に対して委員会活動への参加を働きかけ、また、常議員である会員に対しても引き続き委員会活動に参加することを要請した。また、田中執行部を支える意味でも、期成会員の所属していない委員会をなくすべく、幅広く会員に働きかけをしている。
今後、一層各会員の委員会活動等への参加を期待したい。
広報委員会活動報告
委員長 山 下 基 之
1 Wa 2002年度発行は3号。
NO1、 東弁選挙・法学教育と弁護士の役割
NO2、 期成会の活動と今後
NO3、 夏合宿の総括と秋の活動
2 内容
各号につき編集担当者1名を決めている。
「私の弁護士シリーズ」「各地のOBから」は委員会独自の企画であり、その他の原稿は期成会の企画の参加者からの報告である。
3 委員会メンバーは現在実働5名。山下 西嶋 川上 伊澤 池尾
NO1、以後、大森香織会員が退任した。黒沢圭子会員は後に復帰される予定。各号の担当が2名とすると、あと3名は委員メンバーがほしいところである。
4 おもしろいか? 読まれているのか?
さっぱりわからないのが現状である。ただ、今後も、期成会メンバーの活動、事件報告など、読みやすくおもしろい内容を追求する予定である。
弁護士任官推進本部活動報告
本部長 坂 井 興 一
事務局長 中 村 雅 人
今次の司法制度改革の正否のカギを握る弁護士任官の推進につき、期成会では今年度、推進本部を立ち上げた。これは、法友、親和にも影響を及ぼし、その後の東弁全体の弁護士任官問題の活性化に貢献した。
期成会会員の水野邦夫さんが2002年6月1日に任官された。期成会では、5月20日に激励会をし、10月3日には幹事会にお招きして4か月の経験を聞く会を開催した。2003年4月1日には桑原宣義さんも任官される。2003年3月11日に激励会を開催した。期成会の事務所は任官が難しいのではないか、といった懸念を完全に払拭した歴史的な出来事と言える。
東弁初の弁護士任官推進事務所(東京パブリック法律事務所)が6月17日にオープンした。所長の石田武臣さん、常勤弁護士の伊藤方一さんは期成会員である。弁護士任官者を恒常的に輩出する体制作りが進行している。
日弁連第19回司法シンポジウムは、弁護士任官をテーマに通年で取り組まれ全国32名の任官(可能)者を準備した。期成会弁護士任官推進本部では、日弁連、東弁で実施した任官アンケートで意向を示した期成会員に打診して意向確認をした。
次年度は、
@ 上記の関係者らの協力を得て、適宜イベントを開催し、会員の任官意欲を高揚させ、可能性のある人には個別に対応すること
A 6月に予定されている非常勤裁判官にもいち早く名乗りをあげる準備をすること
B また任官支援事務所の構築を具体化する方策を議論すること
が課題である。
基本政策プロジェクトチーム活動報告
座 長 高 木 國 雄
1.成り立ち
期成会の「基本政策プロジェクトチーム」(以下、単にチームと略す)とは、些か耳なれない名称であるかもしれない。
このチームは、2003年度の東弁会長選とその勝利を視野に入れて、当会の掲げる政策を明快かつ大胆に、しかも日弁連・東弁の当面抱える全ての課題へ及んで洩れのない立派な政策冊子を作成するという、途方もない重い任務を担うこととなった。
さらには、後で振り返ると、2002年年末以降に東弁会長選挙体制立ち上げた際その中核的役割を担ったメンバーの殆どがチームに所属していたことになる。メンバーは21名であり、6月末から徐々にペースを上げながら、その討議・検討と文章化の作業を濃密にしていったのである。
2、序盤の活動
チームは6月に1回、7月に6回と集中的に検討を進めた。
この時期に後にA4版71ページの「21世紀の新しい司法をめざして 市民とともに人権の世紀を創る」として完成した冊子の劈頭を占める”総論”たる「めざすべき司法改革と弁護士の役割」部分、及び”各論”の個別課題の選定、枠組などの素案作りを行った。出来上がったものをみただけでは、一見それほどの苦労の跡は窺えないかも知れないが、この素案作り、わけても総論部分の作成は難渋を極めたものである。この部分にこそ、現在の日弁連主導の司法改革を巡る意見の対立点と、この改革に向けての姿勢の分岐点があったからである。
”総論”素案の第一原案の作成という誉ある打たれ役は、斉藤義房、中村雅人の両会員が担当してくれた。この両名の叩き台からまとめ案を抽出して徹底的に討議し、何度となく加除訂正を加え、ほぼ冊子に記載ある最終案へと練り上げていった。まずは、労作を提起してくれた上記両会員へ敬意を表しておきたい。
またこの叩き台討議の過程で、中本源太郎会員に代表される現在の日弁連の司法改革活動に対する批判者グループの明快で痛烈な批判意見は、情勢を冷静にみる面からと、問題の所在を再認識する面から大きな影響を与えてくれた。
こうした意味ではこのグループにも敬意を表したいと思う。このグループと繰り返し意見を戦わすことによって、圧倒的多数の当会会員を含む弁護士層が賛同する政策をまとめられると、自信をもてるに至ったのである。
さらに、この間6月1日には改革審意見書の評価を巡って、また7月22日には弁護士自治の意義を巡って会内集中討議が催された。何れの会合でも、当会の名だたる論客によって徹底的なデベートが行われた。この試みによって、現時点の弁護士側からみた司法改革の問題点を明快にかつ鋭く抉ることができた。そして、チームの作業をまとめる上で極めて有益にもなったのである。
3.中盤の活動
その後のチームの討議日程を辿ると、8月に1回、9月に4回、10月に4回、そして11月に3回と続いて、12月2日の臨時総会で政策冊子が配布できたのである。
この間はやや討議回数が減っているが、これは8月の夏期合宿で5時間以上を費やして”司法改革全般”をさらに討議にかけたこと、執行部と各期との懇談会が進んでいたこと、先輩会員との意見交換会、役員経験者との懇談会、そして執行部会、幹事会へも政策討議中の課題を投げかけ、そこでの意見聴取を試みていたからである。
9月に入ると50項目に及ぶ個別テーマ執筆者の人選と、その依頼が始まった。まず、政策の基本趣旨を理解してもらうことが前提条件であった。やむなく複数のテーマを1人へ任せねばならない場合もあったが、ほとんどは1人1テーマであった。執筆者は当会の現時点の活動の最先端を担っている人、重く問題意識を担い続けている人が中心であった。網の目のごとく広がっている個別テーマの第一線に活発に活動する当会会員の執筆者がいるということは、当会の活動の幅の広さと、この冊子作成が実に多くの会員の協同作業によって成ったことを実感させるものであった。
4.終盤の活動
10月から11月にかけては、集まってくる個別テーマ毎の原稿検討や、その結果を執筆者へ戻したり、執筆者と連絡をとるなどの加筆・修正作業が続いていた。そして漸く出来上がった第一稿の印刷原稿に対しては、更に数回に及ぶ校正作業が加わった。これら作業は、例年の政策作りで担当者が繰返し苦しんできたものであったが、今年のその厳しさは例年の比ではなかった。
この苦役を担ったメンバーは、主に、執行部の三役に、吉羽真治、斎藤義房、中村雅人、田中敏雄、そして高木國雄の5会員であった。この作業の間、一貫して政策の質に頑なな姿勢でこだわり続けたのは、鈴木、脇田、田中の3会員であったろうか。
勿論、関係者は全員より良い質の政策冊子を作ろうと努めていた。しかし、この3会員の粘りとこだわりは、異常であるとまでは言わないとしても周囲を些か辟易させる場面があったと認めざるをえない。
こうしたこだわる者に叱咤され、必要とあらば日程などはそっちのけで無理強引に集合がかかり、集まれば集まったで納得いくまで検討に時間を費やす、などのこだわりの作業を続けることになったのである。
とにかく主要メンバーの頭の中は、12月2日の臨時総会迄に政策を完成・配布することで一杯であったのである。時間と闘いつつ現時点で最良の質をもつ政策冊子を作ろうと邁進することを、とがめだてすることはタブーであった。私達は彼らに引き摺られるようにひたすら集まったのである。
今は、彼らの粘着質で強引、そして熱意ある作業の日々に対して感動すら覚える次第である。
こうして12月2日の臨時総会には、政冊パンフ冊子が(その時点では体裁は整わなかったが、2003年1月初めには東弁全会員へA4版、1頁概ね1300字71頁余の濃いオレンジ表紙の斬新な冊子として配布された)間に合わせることが出来た。
最後の労は脇田康司夫妻の執念に負うところ大である。
5.成果
このような努力を経て政策冊子を完成することが出来た。まだまだこの冊子に盛られた内容が、当会の力量からしても未熟、不十分な部分が多いことを当然認めたとしても、まず完成したことそれ自体を成果として挙げることが出来よう。
そして主要メンバーは、その他にもこの政策冊子作成作業に関ったことによって次に述べるような極めて大きな成果を自分のものとすることが出来たのではないだろうか。それが、その後に続く田中敏夫東弁会長選挙選勝利のいわばインフラ構築の役目を果たしたと思われてならない。
第1の成果は、期成会が政策団体であると長年にわたって自他共に認めて来た伝統の「証拠品」を作成した満足、及び安堵を得ることができたことである。
これが、現実に立証されたのは、その後1月に入り選挙戦小手調べの会合や、
他会派の若手との質問会が始まった直後であった。しかも、この71頁余にすぎない密度の濃い小冊子と、他の集団の部厚い政策冊子を読み比べただけで一目明瞭になった(と思うのは、私だけの贔屓目だろうか)。
第2に、この政策冊子を作り、練りあげる討議と作業を通して、これに関与
したメンバー全員が、作業の進展と連動して徐々に政策にもられた力、問題認識あるいは難問のありかへの切実な自覚 を我が物にしていったことにある。
大仰に言わせてもらえば、この半年余りの期間こそ、弁護士・弁護士会の課題から司法をめぐる緊迫の動きを自らの問題としてくり返し問いかけ、悩むという幸運な日々がもてたということになる。
第3に、こうして生まれた自信が根をはって、私達は選挙という泥まみれでその場限りの戦術に暮れる渦中にあっても、常に信念をもち堂々と、相手と対峙し続け得たのである。当会の候補こそが最適の人材であり、最良の政策に裏打ちされた者であると訴えうる有形、無形の自信と自負を持つことへつながっていったということである。会長選の演説会や、公聴会における田中候補の力強さは、彼自身の積み上げ築き上げた人格の発露であるところ大であるとしても、尚、この小冊子を作り上げた小集団の仲間達と共に苦しみ獲得してきた過程の自信が加わっていたことを見逃すことはできない。
最後にこのチームの活動報告へもう一つ付言したいと思う。このチームメンバーは、厳しい日程をこなして、ついにチーム ”成り立ち”の時点でしかと視野の片隅に据えていた東弁会長選勝利という目標へ充分に貢献することが出来たのである。従って、いまは、その活動の日々をどんなに慰撫されてもよいと思う。私は、その時々の苦渋の過程で、それでも逃げず立ち向かってくれたあの顔この顔と何名も何名もの忘れ得ぬ会員の名前を思い描いている。
現在は、どのような考えであれ一旦仕上げて文章化すると、それは全て汲みとる力と心ある者の血肉になるという当たり前のことを考えている。
そして、また新たに若い世代によって新たな「司法のあるべき姿」を目指す動きがそして、変化してやまない「司法のあるべき姿」を目指す動きが、 |
そして次なる若い力の台頭によって新しい「司法のあるべき姿」を目指す動きが担われ、その新しい息吹の中で次なる野心的「政策」冊子を創造してほしいと思うだけである。
敗訴者負担制度プロジェクトチーム活動報告
座長 山本 孝
1 弁護士費用敗訴者負担制度について、2002年11月28日から「司法アクセス検討会」で本格的な議論が開始されることを受けて、日弁連では「対策本部」を設置し、敗訴者負担制度反対の運動を当面の最重要課題として位置づけた。
期成会においては、特に検討会で亀井時子会員が委員として活躍していることもあり、亀井委員のバックアップと国民運動を早急に大きく盛り上げるために昨年9月に「敗訴者負担制度プロジェクトチーム」を設置した。
緊迫した重大な情勢の中で、敗訴者負担の弊害をクローズアップする最も大きな武器は「具体的事実」であるため、期成会員に、敗訴者負担が弊害をもたらす具体的ケースの情報を集中していただき、分析をして「検討会」での資料として届ける方針を立てた。
2 その後、何人かの会員に具体的事例を報告していただいたが、残念ながら全体として数が少なく、プロジェクトチームのメンバーが分担して作業を進めてきた。何とか30例ほどに達したものを一覧性の形式にまとめワープロをして最終的まとめがほぼ完成した。
来年度、敗訴者負担制度は最重要課題となる。しかし、検討会では亀井時子委員や消費者団体出身委員が導入反対の立場でがんばっているものの、導入賛成の委員の壁は厚い。前述の事例分析を完成させその活用を図ると共に、日弁連の運動をささえるための署名運動などで、期成会が大きい力を発揮しなければならない。
有事法制プロジェクトチームの活動報告
座長 飯 田 幸 光
1. PT委員・・飯田幸光 二瓶和敏 斎藤義房 滝沢 香 泉澤 章 川上詩朗
2.期成会の日弁連有事法制問題対策本部委員(理事以外で29名中8名)・・四位直毅 床井茂 山本真一 下林秀人 海老原信彦 飯田幸光 斎藤義房 滝沢香 川上詩朗
3.日弁連有事法制問題対策本部など日弁連の2002年中の主たる活動の概要
3月15日 「有事法制」法案上程に反対する理事会決議可決
4月19日 日比谷野外音楽堂の市民集会で川中副会長が連帯の挨拶
4月20日 「有事法制」法案に反対する理事会決議可決
5月09日 有事法制問題対策本部の設置を理事会が承認
5月24日 定期総会で特別報告
5月26日 村越進対策本部本部長代行名で朝日新聞朝刊の「私の視点」に投稿
6月04日 銀座と新橋で有事法制反対のビラの配布活動
6月05日 朝日新聞朝刊全国版に有事法制法案反対の意見広告
6月07日 クレオで有事法制反対の緊急市民集会・シンポジウム開催
6月13日 日比谷野外音楽堂の市民集会で松倉副会長挨拶
6月16日 代々木公園の集会で伊礼勇吉東弁会長が挨拶
6月21日 「有事法制」3法案に反対する日弁連意見書を理事会で可決
10月11日 人権大会で「有事法制」3法案の廃案を求める決議を保留2で可決
10月23日 有事法制反対の日弁連1000人国会パレード
12月01日 代々木公園の集会で伊礼勇吉東弁会長が挨拶
12月16日 インド洋の「イ−ジス艦」派遣反対の会長声明発表
4.有事法制プロジェクトチームの活動の概要
04月18日 幹事会で有事法制プロジェクトチーム委員を選任
04月26日(第1回会議) 「有事法制問題に関する期成会の提言」(案)を確定
05月01日 執行部が東弁会長と各会派宛に期成会の上記提言を提出
05月02日 東弁理事者が憲法問題協議会提案の会長声明案を採択
05月07日 常議員会で期成会員が有事法制反対運動の組織的展開を求めて発言
05月10日 有事法制反対の会長声明公表
会議は、5/9日(第2回)、6/10(第3回)、7/8日(第4回)、8/28(第5回)、9/26(第6回)、11/1 2(第7回)、12/6(第8回)、2/27(第9回)
5、まとめ
有事法制プロジェクトチームの発足以来、1月に1回、会議を開いて、東弁理事者へ の提言、銀座と新橋での有事法制反対のビラ配布活動、朝日新聞の有事法制法案反対の 意見広告へのカンパ、日弁連・東京三会共催のクレオでの有事法制反対の緊急市民集会 ・シンポジウムへの参加、「有事法制」3法案の廃案を求める決議を圧倒的多数で可決 させるための日弁連人権大会への参加、有事法制反対の日弁連1000人国会パレード への参加などのために努力してきた。この中で、有正副会長兼日弁連理事、斉藤義房日 弁連理事、期成会執行部、期成会会員の多大の御尽力・御協力を戴いた。
1月20日から始まった通常国会が最大の山場になるので引き続き、各位の特段の御 尽力・御協力をお願いしたい。
憲法改正問題プロジェクトチームの活動報告
座長 山 本 真 一
2002年総会で、期成会の中にも「憲法改正問題プロジェクトチーム」が設置されました。
しかし東弁ではすでに半公式時代の活動を含めれば10年近い実績がある憲法問題協議会(3年前に正式の東弁の特別委員会となる)が設置されていて多くの期成会員が活動していました。
また今期は日弁連にも「憲法問題委員会」や「有事法制対策本部」が設置されて、極めて活発に活動をするようになり、ここでも多くの期成会員が活躍しています。
ですから期成会内の「憲法改正問題プロジェクトチーム」は連絡責任者と構成員の確認だけをして、必要がある時に会合を持つとすることにしました。しかし、実際今期中は期成会内で特に会合をもって協議することはしませんでした。
来期は田中会員が東弁の会長に就任することから、当委員会としては今まで以上の役割を果たさなければならなくなると考えております。
以下では、憲法や有事法制をめぐる現在の情勢を報告して、報告に代えさせていただきます。
(アメリカのイラク攻撃を阻止し、朝鮮半島の平和を実現し、有事3法案の廃案をかちとる課題をめぐる情勢)
9・11事件以後のアメリカは、もはや「帝国」と呼ぶのがふさわしい存在になっています。世界のどの国も対抗できない軍事力を振りかざして、一方的に自分の意思を実現しようという態度です。この横暴な態度は世界中の国と民衆から激しい抵抗を受けています。これはイラク攻撃をめぐる最近の動きを見れば明らかです。
この3月にもアメリカとイギリスによるイラク攻撃が実行されるかもしれません。しかしこの国連憲章も国際法も無視した米英の行動に対して全世界から「戦争ノー」の声が巻き起こりました。2月15日にはロンドンの200万人のデモをはじめ、600以上の都市で2000万人近い人々が反対の行動に立ち上がりました。日本でも78%の人がイラク攻撃に反対です(2月25日朝日)。数千人の若者たちも次々と銀座や渋谷での反対行動に立ち上がっています。2月14日の明治公園の反対集会には2万5000人の人々が決集しました。
米英の政府はこの世界の世論を無視できなくなり、武力行使を容認する国連安保理の新たな決議を求めはじめました。世界の歴史上はじめて一人一人の市民の声が、超大国の戦争政策の実現を押し止めつつあります。まさに日本国憲法9条の精神が世界を覆いはじめています。
しかし日本政府は圧倒的な反対の世論を無視して、早々とイージス艦等をインド洋に派遣してアメリカへの支援行動を開始しています。2月18〜19日の国連安保理での公開協議では、62ケ国中52ケ国がイラクに対する査察の継続を求めたにもかかわらず、日本は米英の武力攻撃の方針に賛成することを表明しました。世界を戦争に導く3悪人はアメリカ・イギリス・日本だという評価をされるようにさえなっています。
一方、朝鮮半島でも戦争の危機が高まっています。アメリカのブッシュ政権は北朝鮮を「悪の枢軸」の一員と規定して、94年の米朝合意を意識的に無効化しようとしました。さらにアメリカは昨年10月16日、北朝鮮の核開発問題を意図的に暴露して、日本・韓国等の北朝鮮への平和的な接近はアメリカの歓迎しないところとの態度を示唆しました。
そしてアメリカは北朝鮮が執拗に求めている米朝間の直接対話を拒否し続けています。これらのアメリカの挑発に対して北朝鮮はNPT(核拡散防止)条約からの脱退を宣言する等の行動を開始し、「核保有だけが北朝鮮の安全保障だ」という姿勢を見せはじめています。マスコミ各紙は、現在のところは、これらの北朝鮮の行動はアメリカを交渉のテーブルにつけるための脅しの政策(瀬戸際政策)だと評価していますが、最近は北朝鮮が本気で核兵器の抑止力による安全保障を考えているかもしれないとの意見も出始めています。
いずれにせよ、北朝鮮が核兵器の保有や運搬手段である弾道ミサイルの保有にむけた動きを強めれば、いずれアメリカが北朝鮮に対する武力行使に踏み切る可能性は極めて大きくなります。第二次朝鮮戦争にまで至るおそれも否定できません。
他方、韓国では金大中大統領の太陽政策の継続を掲げた盧武鉉大統領が当選し、2月25日から正式に大統領としての執務を開始しました。盧武鉉大統領も、彼を当選させた韓国民衆も、朝鮮半島に二度と戦火を起こさせないとの決意の下にアメリカと北朝鮮との間を調停する動きを強めています。韓国国民が北朝鮮に対する武力行使を容認する可能性は極めて小さくなっていると思われますので、アメリカが武力行使に踏み切ることはできないという意見もありますが、楽観的すぎると思われます。9・11以後のアメリカの凶暴さは全世界が反対しても武力行使に踏み切ろうとしているイラクの例をみれば、過少評価
はできません。この事態を踏まえて、中国・ロシア等も朝鮮半島の非核化や核問題の平和的な解決を求めて、北朝鮮の説得に動きはじめていますが、「アメリカからの体制存続の保障」を求める北朝鮮は、アメリカとの直接2国間交渉を求めて譲ろうとはしていません。
ところで、昨年9月17日に日本の小泉政権は日朝平壌宣言を締結して、東アジアの平和と安全に向けた大きな一歩を踏み出しました。しかしこの積極的な姿勢も、アメリカの「日本に勝手なまねはさせない」という抵抗に合うと、途端に腰砕けになり、その後はアメリカの言うがままの「属国」路線に再び回帰してしまいました。しかも小泉首相はこの外交方針の転換を国民の目からそらすために、「国の政策として」一時帰国した拉致被害者は北朝鮮には返さないという外交政策としては無責任極まりない強硬姿勢を取ったり、韓国・中国の最も嫌がっている靖国神社への3回目の参拝を行ったりしています。さらに北朝鮮の不正常な行動に対する日本国民の不安を梃子として、有事法制3法案の成立を狙っています。
しかし小泉政権のこのアメリカべったりの戦争追随路線も、本年2月18日のイラク攻撃に関する国連安保理での公開協議で武力行使を容認する安保理決議に賛成する態度を明確にしたことで国民の目にもはっきりしはじめています。8割近い国民が反対しているイラク攻撃を積極的に容認するという小泉内閣の無責任極まりないアメリカの戦争への追随路線に対して、もはや国政をこのような内閣にまかせてはおけないという声も次第に大きくなり初めています。いまこそ日本の平和と民主主義を護り発展させる全ての勢力を結集することが急務になっています。
・ _
2002年度日弁連理事会の総括的報告
日弁連常務理事 斎 藤 義 房
1.2002年度は、月2回(原則として毎月第3週目の木、金の連日)、24回の理事会が開催された。出席率は毎回ほぼ100%である。特に地方から出席する弁護士会会長の労力と負担には頭が下がる。毎回、司法制度改革推進本部の11の検討会の進行状況の報告とそれに対する日弁連の対応について議論するが、各地の弁護士会で情勢に対応した議論をし、その結果を理事会で述べるという段取りをするのは大変なことである。
そのためには、会員への情報の迅速な開示が重要であり、今年度実行された大川事務総長編集名義の「Nichibenren News」(日弁連速報)の役割は大きかった。次年度も、さらに一層工夫をする必要がある。
(なお、理事会ごとの審議内容については、その都度FAXで送付した報告書を参照されたい。)
2.今年度の日弁連正副会長会は、内閣、司法制度改革推進本部、自民党司法制度調査会、国会などでの司法改革の動きを、可能な限り迅速かつ正確に理事会に報告し、日弁連の方針についても、そのたたき台の段階から理事会に開示して理事会の意見を問うという姿勢を貫いた。そして、各課題ごとに、日弁連理事会で承認された方針に添って、その実現に向けて、関係者に面会・説得し、日弁連の意見に対する理解を求めるために積極的に行動し、発言した。
その一例として、私自身が現認した事実がある。2002年10月30日のマスコミ論説・解説委員との懇談会の席で、NHK、日経、東京などの委員が、弁護士報酬敗訴者負担に反対する日弁連人権大会決議を批判する姿勢を示したとき、本林会長が「この決議の責任者は私である。日弁連は司法制度改革審議会の意見書を基本的に評価する立場であるが、敗訴者負担制度は、司法を市民に利用しやすくするという司法改革の上位概念に反するおそれがある」と毅然と述べ、日弁連の方針を理解して欲しいと強く訴えた。その直後に、会長は、敗訴者負担対策本部の辻本部長代行と私に対し、「この問題は運動でマスコミにもわからせるしかない」と述べた。このように、今期の日弁連執行部は、やるときは断固としてやるという姿勢を示している。
いま必要なことは、この様な執行部の姿勢をバックアップして国会議員やマスコミなどに働きかけるために、各課題への取り組みを執行部まかせにするのではなく、ともに行動する会員を一人でも多くすることである。それなしには日弁連の運動は広がらず、世論の支持を受けるものにならない。司法書士会その他の諸団体のロビー活動のすさまじさは、ある意味で見習うべきである。
3.今年度は、理事会開催日の2日前に、東弁選出日弁連理事と東弁理事者との打ち合わせ会が1時間ほど持たれたが、きわめて形式的になっており、実質的な議論はほとんどできず、結局は理事会当日に各理事がそれぞれ見解を述べるにとどまった。
事態の動きが急であって、理事会当日まで情勢が動いていることから対応を決めかねる面もあったが、次年度は、次に述べる東京三会の日弁連理事の連携のあり方を含めて、東京での運動をどう進めていくのかについて議論をする場と時間を設定すべきであろう。
4.東京三会の選出理事相互の連携がほとんど取られなかったことは改善すべきである。
各議題ごとの事前の討議までは無理としても、少なくとも国会議員への統一要請行動が計画されている理事会の前には、三会理事者が事前に打ち合わせをして、東京三会の理事の要請先の分担を決めておくことは絶対に必要である。地方会の会長が地元選出の議員に予約をとって要請をしていることと比べて、東京三会の対応の消極性と段取りの悪さは反省材料である。
5.今年度の期成会の議論は、司法改革の総論部分の討議に終始した観がある。もちろん、そのこと自体は必要でありもっと早い時期にやっておくべきであったが、情勢に見合った各論の討議と対応が不十分であったことは否めない。次年度は、司法改革の立法化が急速にすすむ。
期成会は、田中次年度日弁連副会長を押し出した政策団体として、推進本部や国会を見据えた各論の討議と運動を担っていく責務がある。評論家から実践家への転身が期成会の最重要課題である。
関弁連活動報告
中田利通(31期)
1.関弁連は,日弁連と各単位弁護士会との間に位置する弁護士会の連合会(通称・ブロック)で,高裁管轄に対応して全国に8つある。毎月の常務理事会(20名)と各種委員会活動が中心である。
2.関弁連の活動には,定例的なものとして,@定期大会・シンポジウムの開催(本年度は茨城県弁護士会の担当で「子どものための法教育」をテーマとして取り上げ,決議は,「自然環境保全の視点から見るダム問題の解決について」取り上げた。この決議テーマが通常次年度の定期大会・シンポジウムのテーマとなる。15年度は群馬県弁護士会が担当である。)A 法曹連絡協議会の開催(東京高裁,東京高検,地家裁,東検の間の「司法の運用改善のための情報を交換し,協議を行うことを目的」とする協議)などがある。
(詳しい内容は「関弁連だより」やホームページを参照されたい)
3,本年度の関弁連活動の中で,目玉のひとつは,「裁判官候補者推薦に関する委員会」が設置された点であろうか。
弁護士任官の推薦については他のブロックでは各弁連単位で推薦を行うシステムになっていたが,関弁連管内では東京三会がすでに独自に推薦諮問委員会を持っているため,これをどうするか問題であったが,例外なく東京三会も関弁連を通すことになり、関弁連でもブロック単位のシステムとなった。ただし,審査手続に「屋上屋を重ねる」弊害を排するために「簡易な方法」で日弁連に推薦する配慮をすることになった。8月〜9月に委員の人選を行い,11月には3つの小委員会が開催され,3名の任官候補者の面接調査が行われた。
4,関弁連は,あまり周知されていない面もあるが,交通・情報・通信手段が発達した現在とはいえ,弁護士の活動・市民のニーズにはなお地域性があり,単位弁護士会の壁を越えた活動が直ちに日弁連レベルの活動に直結するものばかりではないので,関弁連の存在意義は決して軽いものではない,というのが,常務理事を経験して得た実感である。
以 上