インタビュー田川俊一会員(24期)に訊く
2024年6月28日
田川総合法律事務所

聞き手 上石奈緒(50期)
田川淳一(50期)
伊藤敬史(56期)
「あの大海原にこそ、人間らしくまっとうに生きる喜びを与えてくれるロマンが秘められている。だが、弁護士に転職したればこそ、今回のような事件を担当することが出来るのだ。男冥利に尽きる。田坂はいつも弱き者の味方でありたいと願っているだけに、傲慢な権力に対しては、我慢出来ない反骨精神の持ち主だった。」
山崎豊子さんの遺作『約束の海』で、田川俊一弁護士をモデルにした“田坂了一弁護士”はそのように描かれています。『約束の海』のモチーフとなったのは、「なだしお事件」。海上自衛隊の潜水艦が遊漁船に衝突して、遊漁船に乗っていた30名の市民が犠牲となったこの事件で、田川弁護士は、遊漁船の船長の海事補佐人として強大な国家権力と闘われました。
本インタビューでは、その「なだしお事件」を中心に、海事弁護士の泰斗として長らく活躍していらした田川弁護士に、海事事件についてうかがいました。東京商船大学から損害保険会社勤務を経て、働きながら法律を勉強して司法試験に合格し、海事弁護士としての道を切り拓いていらしたお話は、法曹界の多様性の先駆けのようにも感じられます。白いあごひげを揺らしながら、ワッハッハと豪快に笑うお人柄に魅了されるインタビューでした。
≪ショート動画≫ 2分6秒
≪本編動画≫ 41分33秒
1 弁護士になるまでの経緯(0:00:14)
2 ロンドンでの実務研修(0:07:39)
3 海事弁護士としての仕事(0:09:48)
4 なだしお事件(0:20:29)
5 山﨑豊子『約束の海』(0:29:38)
6 海事事件について(0:33:22)
7 若い人へのメッセージ(0:40:27)
田川俊一 会員(24期)
≪プロフィール≫
1960年 東京商船大学航海科卒
1963年 中央大学法学部卒
1960年~1970年 損害保険会社(海損部)勤務
1972年 弁護士、海事補佐人登録
1973年 ロンドン海事弁護士事務所で実務研修
≪主な取扱い事件≫
第拾雄洋丸/パシフィックアレス衝突事件(74年 東京湾)
日昇丸/米国原子力潜水艦ジョージワシントン衝突事件(81年 東シナ海)
貨物船なち丸沈没保険金詐欺事件(86年 高知沖)
調査船へりおす沈没事件(86年 福島県相馬沖合)
潜水艦なだしお/第一富士丸衝突事件(88年 東京湾)
ヨット・マリンマリン/ヨットたか号転覆事件(91年 八丈島東方沖合)
練習船海王丸乗揚事件(04年 伏木富山湾)
自衛艦おおすみ/釣船とびうお衝突事件(14年 宮島南方)
自衛艦のとじま/ジェイケイⅢ衝突事件(19年 三原瀬戸)
≪著書(共著)≫
『海上交通の安全を求めて』(76年 海文堂)
『検証・潜水艦なだしお事件』(95年 東研出版)
『便宜置籍船との闘い』(01年 海員組合裁判記録編集委員会・共著)
『船舶衝突の実務解説』(監修)(17年 成山堂)